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88話 モナ兄様は、ほんとうにクソカスですわね。


 88話 モナ兄様は、ほんとうにクソカスですわね。

 『御前試合の間に収集した情報』を、
 キッツから伝えられたモナルッポは、
 渋い顔で、

「聖主に関しては、やはり、何も分からないままか……」

「本当に存在するのか怪しいレベルです」

「徹底的な情報統制をおこなっているのか……それとも存在しないのか……まあ、いい。そこに関しては、ここからジックリと調査していこう」

 簡単に『対面会議』を終えると、
 モナルッポは、いったん、キッツに、『聖主に関する情報収集』を任せ、
 自分は、一度、都市から離れて、人目のつかない森の中へと入っていった。

 すでに夜になっており、あたりはすでに真っ暗だが、
 『暗視』の魔法を高ランクで使用できるモナルッポにとって、
 闇夜も昼間も大差ない。

 ある程度、森の中を歩き、
 周囲に人の気配がまったくないところまで来ると、
 モナルッポは、擬態の魔法をといてから、
 国宝の一つである『帰還の魔石』を使って、
 ミルスの王城へと戻る。

 ――王城内の中庭に瞬間移動したところ、

「モナ兄様、どこに行っていたのですか?」

 中庭のベンチに腰かけていた『二つ下の妹』であるラフィに見つかって、声をかけられた。
 その声音には軽蔑の色がベッタリと張り付いている。
 ラフィは、昔から、『軽薄で怠惰で無能なモナルッポ』を、心の底から軽蔑している。

「ま、どうせ、遊んでいたんでしょうけど」

 そこで、ラフィは、隣に腰かけているレバーデインに視線を向けて、

「ねぇ、レバー兄様、モナ兄様を叱ってあげてください。モナ兄様は、誰かに言われないと、己の愚かさに気づけない人ですから」

 レバーデインは、ラフィに言われたからではなく、ただただ純粋な怒りにまかせ、

「モナルッポ、ふらふらと遊び回るのはやめろと何度言えばわかる」

 さげすんだ目で、そう言ってきた。
 続けて、ラフィも、

「放蕩者(ほうとうもの)の兄をもって、私、恥ずかしいですわ。レバー兄様を少しはみならってください。レバー兄様は、今日も、朝から、大研究会の資料作りに没頭していたのですよ」

「はいはいはいはい、わかったわかったわかった」

 『頭からっぽの笑顔』と『豪速の早口』でそう言うと、
 『まだ皮肉を言い足りない』という顔をしている妹の追撃を許さない速度で、
 自室へと逃げ去っていった。

 そんなモナルッポの背中を見て、
 ラフィは、侮蔑の表情で、

「ほかは何も出来ないのに、めんどうごとから逃げる能力だけは人一倍ですわね」

 と、とことん見下した口調でそう言う。
 レバーデインが、

「本当に、あいつの逃げ足は一級品だ。昔から思っていたのだが、俊敏性だけで言えば、おそらく、あいつの方が私よりも上だろう」

 その言葉を聞いたラフィが、ぶふっ、と噴き出して、

「面白いジョークです、レバー兄様。実際のところ、モナ兄様が、レバー兄様に勝っている部分など皆無でしょう。知っています? モナ兄様の存在値って、私が10歳の時の存在値より下なんですよ。もう、笑ってしまいますわよね。もし、私が、モナ兄様だったら、とっくの昔に自殺していると思いますわ」


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