センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
43話 積み重ねたものは、私にもある。
43話 積み重ねたものは、私にもある。
「最終的には力を示すしかない……その意見にだけは賛成。いくら、たくみに言葉を使っても、思想のぶつかりあいに決着はつかない。お互いがお互いを正義だと思っていたら、折れることはないから」
ザラキエリは、優しい世界を求めているが、
しかし、だからこそ、ロマンチストではなくリアリストを目指している。
夢でお腹が膨らまないことは重々承知している。
彼女は、ただの『夢見がちなメルヘンバカ』ではない。
世界にはびこる『汚い裏側』からも目をそらさず、
まっすぐに現実を見つめた上で、
『理想の世界』を求めた真正のおバカさん。
「剣気ランク16」
ザラキエリは、自分に可能な最大級のバフ魔法で、剣の火力を高めてから、
「積み重ねてきたものなら、私にもあるっ!!」
全身全霊で、バーチャに斬りかかった。
強い一撃だった。
磨き上げてきたのが分かる一手。
ザラキエリは、ガイリューたちと比べて、種族としてのランクが少し低い。
基本スペックが低く、才能も足りていない。
だからこそ、努力する道を積んだ。
世界平和という『目標』を達成するために、『強さ』を求めた。
バーチャには届いていないが、彼女だって積み重ねてきた。
本当なら『話し合い』で解決したいというのが本音。
だが、『ワガママな強者』は『話し合いのテーブルになどつかない』という事実を知っている。
テーブルにつかせたかったら、力ずくで座らせるしかない。
――そのための力を、ザラキエリは求め続けた。
血ヘドを吐くほど努力した結果、聖龍王の親衛隊という地位にまで上り詰めることができた、
だからこそ理解できる部分があった。
目の前にいる超神が抱いている誇り。
『本当に積み重ねてきた者』特有のプライド。
「足りないな、バードマン。お前も、ある程度は積んできたようだが……まったく足りていない」
バーチャは、ザラキエリの攻撃をヌルリと回避して、
「私は、貴様よりもはるかに優れた才能を持っている。私は、神の中でも特別な神。特別な資質をもって生まれてきた選ばれし天才。そんな才気あふれる私だったが、満足することなく、慢心することなく、むしろ、誰よりも努力を積んで、高みを目指した。気が遠くなるほどの時間をかけて、自分が吐いた血ヘドで溺れてしまいそうになるほど、私は、必死になって、己の魂魄を磨いてきた」
バーチャ・ルカーノ・ロッキィは努力の量を自慢する。
努力の量に関しては『間違いなく自分がナンバーワンである』と言う強い自負があるから、ザラキエリに対して、全力のマウントをとる。
バーチャ・ルカーノ・ロッキィは、事実、休まないウサギ。
稀に見る、生粋の努力家。
だからこそ傲慢になる。
積み重ねてきた全てが、彼を助長させる。
「……己の主張を通すためには、それだけの積み重ねを必要とする。お前は足りない。『努力の足りない弱者』の『甘え』を許容するほど、この世界は終わっていない」
そう言いながら、
バーチャは、極限まで手加減したオーラで、ザラキエリの腹部に拳をたたきこむ。
「うがぁはぁつ!!」
くの字に曲がって、血を吐いて、
「うぐっ……ぐっ……」
激痛に顔をゆがませる。
バーチャは、そんなザラキエリの頭を踏みつけながら、
「正義だの、悪だの、そんな概念は、振りかざした時点で、どちらも同じ醜いエゴになりさがる。貴様は、エゴを通せるだけの力もないくせに、正義を振りかざして他者を否定した。その行動こそが悪だ。悪や正義などどうでもいいが、一つだけ断言しよう。私も貴様も悪だ。そして、どちらの方が『より醜い悪か』と言えば『貴様の悪』の方が、圧倒的に醜い」
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