センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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17話 お前の絶望を殺してやるよ。


 17話 お前の絶望を殺してやるよ。

 産まれて、命を奪って、死ぬだけ……そこに、どんな意味があったんだろう。
 罪悪感という牢獄に閉じ込めた心の奥が『穢れた気持ち』でいっぱいになる。
 グニョグニョとした、不定形の感情たちが、彼女の涙腺を暴力的に刺激した。

 泣きたいとは思っていなかった。
 けど、あふれてしまう涙。
 みっともなさに辟易する。
 さっさと死にたいと願う反面、
 ――心の奥の奥から、『際立った感情』が沸き上がってきた。
 決して、口にはしない。
 口に出すつもりはない。
 けれど、どうしても思ってしまった。
 心の中で、どうしても響き渡る、ミシャのシャウト。


 ――アイサレタカッタノ――


 贅沢な望みだ。
 そう思う。
 どのツラ下げて、何を思っていやがる、
 ――と、自分自身のメルヘンさにイライラする。
 けれど、本音だったから。
 ごまかしきれなかった。

 むき出しになった無様な自分に呆れ返って、
 『困ったような顔』で終焉をしめくくるの。
 そうやって、せめて、最後は、シニカルに、
 アイロニーな命の走馬灯をかみしめたいの。


 ――たくさんの言葉と想いが、重たいミルフィーユになっていく。
 『壊れた天秤』を打ち砕く、何層にも重なった『瀟洒な弾劾』で、
 ただ辛かっただけのアンサンブル・カーテンコールを終わらせる。



 そんな彼女の『バッドエンドをリアルだと思い込む妄想』に、
 『勘違いは見てられねぇ』と、ワンパンをかましていく閃光。



「――逆気閃拳――」




 それは、まるで、トゲ抜きのような拳だった。
 そもそも攻撃ではない。

 決して、ミシャを傷つけるものではなくて、
 むしろ、痛めつけられているのはセンの方。

「ぶへぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 『ミシャの体』に触れた『センの拳』に、
 ミシャの禍々しいオーラが、容赦なく、からみついてくる。
 まるで、異物にくらいつく白血球。
 明確な殺意で、センのオーラを殺そうとしてくる。

 ちなみに、それは、ミシャの意思ではない。
 善意や好意ですら、自動的に排除する、邪悪で孤独なATフィールド。

「え?! えええ?! な、何を……っ?!!」

 理解ができず、驚き、あわてふためくミシャ。

 センは、自身の全身をズタズタにしてくる『ミシャのオーラ』に耐えながら、

「……ぃ、言っただろう……お前の絶望を殺すって……」

 かすれた声で、
 目から黒い血の涙を流しながら、
 必死に、痛みに耐えながら、


「伝わってくる……お前の痛み……苦しみ……ぐぅ……ぬぅ……」


 吐血する。
 全身をかきむしり、
 激痛と絶望の底で、

 それでも、センは、
 まっすぐな目で、ミシャを見つめ、


「……そう簡単に終われると思うな……」


 黒い涙があふれて、
 己が吐いた血に溺れながら、


「……暗闇の中で迷っているというのなら、俺が道標になってやるから、一回ぐらいは、まっすぐに前を歩いてみろ。最近ちょっとヒマだから……退屈しのぎに、少しだけ、お前の光になってやる」


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