センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

16話 ゴールドスペシャル。


 16話 ゴールドスペシャル。

「じゃ、邪魔しないで……私は……死にたいの……っ」

 センを吹っ飛ばしたミシャは、悲鳴のように、

「はやく! 私を!」

 その叫びに呼応するように、

「死ね、ごらぁああ!」

 リグが、ミシャに向かって突撃をかます。

 このままだと、ミシャが死ぬ。
 そう思った瞬間、センの脳がさらに沸騰した。
 すでに、キレッキレになっていた脳が、さらに加速していく。

 その結果、





「ゴールドォォオオオオ!! スペシャルゥウゥ!!!!!」





 センは、叫んだ。
 意識を置き去りにした叫び。

 その叫びの直後、
 センの肉体がググっと変化する。
 ゴブリンの姿から、魔人の形態へと。

 ポ〇モンもびっくりの速度。
 ほんの数秒で、ほぼ完全に『人の姿』になったセンは、
 オーラを練り上げて、地面を蹴りあげる。
 ブーストされた肉体が、弾丸のように、リグの体を吹っ飛ばした。


「ぐはぁっ!! な、なんだ?!」


 急な状況に戸惑うリグだが、センの姿を見て、すべてを理解する。


「あ、あのゴブリン、最悪のタイミングで、魔人に進化しやがった……っ」


 この妙なタイミングで魔人に進化したセンを見て、
 ミシャは顔をゆがめて、

「どうして?! どうして、邪魔を!」

 理解が出来ないという顔。
 イラ立ちが隠せない表情。

 ミシャは、再度、まがまがしいオーラに質量をあたえて、
 センを吹っ飛ばそうとした。

 けれど、魔人になったセンは、

「ゴブリンの体では不慣れすぎて、まともに動かせなかったが、魔人なら、構成は、ほぼ人間と同じ……これなら、舞える……いつも通りとはいかなくとも……多少はまともに」

 そう言いながら、ミシャのオーラに、自分のオーラを合わせていく。
 オメガバスティオンではなく、単純なオーラの受け流し。
 しなやかに練られたセンのオーラが、ミシャの重たいオーラを優雅にいなしていく。

「っ?!」

 センのオーラコントロールに瞠目するミシャ。

 ――魔物と人間では、オーラの練り方がまるで違う。
 やることはほぼ同じなのだが、右投げと左投げぐらいの違いがある。
 『外観のシルエット』だけで言えば『さほどの違いは無い』のだが、当人的には大きな違いが生じている。

 プロの投手でも、右投げ投手が左で投げると、ボールが『明後日の方に飛んでいく』というのはよくある話。

「この体でのオーラの練り方に慣れていないのは変わらないが……『慣れていない』というだけなら、修正はできる……俺には才能というものがカケラもないが、『繰り返してきたこと』は、間違いなく、根源の血肉となっているっ!」

 そう言いながら、センは、体内のオーラを、すべて右腕に集中させる。



「ミシャンド/ラ……『殺してやる』よ、お前の絶望」



 『際立って特異な資質を持つセン』に対し、
 最初は動揺していたミシャだが、

「……」

 時間経過により、
 センの『奇妙な破格さ』を理解すると、

「………………ありがとう……おかげで、楽になれる……」

 ――ああ、やっと死ねる……

 ちょっとだけ意味不明な遠回りをしたけれど、
 『殺してくれる』のであれば、何も問題はない。

 ――辛かった。けど、やっと終わる――

 そんな安堵の中で、ミシャは、静かな走馬灯を見た。

 ――何もない神生だった。

 産まれて、命を奪って、そして死ぬだけ……
 そこに、どんな意味があったんだろう。
 罪悪感という牢獄に閉じ込めた心の奥が『穢れた気持ち』でいっぱいになる。
 グニョグニョとした、不定形の感情たちが、
 彼女の涙腺を暴力的に刺激した。

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