センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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54話 命はいつ完成するのだろう?


 54話 命はいつ完成するのだろう?

 5年が経過した。
 極限状態の5年。

 何度殺しても復活してくるバグ10000匹を相手に、
 センは、抗い続けた。

 『殺した数』で言えば、すでに、50万匹を超えている。


「……もう……いい加減にしてくれ……」


 泣き言を口にしたのは、悪夢バグの方だった。
 センの方は、ラリった目で、浅い呼吸を繰り返しながら、
 もくもくと、キチ〇イのように、一心不乱に、
 目の前の虫けらを駆除し続けている。

「ふぅ……ふぅ……ふぅ……」

 極力、体力を使わないように、
 オーラも魔力も温存しながら、
 最小限のムーブを徹底しつつ、
 機械的に、バグを狩り続ける。

「――無駄だと言っているだろう! ほら、また再生したぞ! いい加減、あきらめろ! 我々を殺しきるのは不可能だ!」

 そんな悪夢バグの言葉を、
 センは、

「はは」

 と、鼻で笑うだけ。
 その目は、もう完全に飛んでいた。

 正常性をパーフェクトに失って、
 ただ、目の前の敵を殺戮するだけのマシーンになっている。

 悪夢バグは、時折、300人の魂に攻撃をしかけている。
 『この戦闘における前提』をずっと遵守している。

 センは、当然のように、体を張って、300人の魂を、悪夢バグの攻撃から守り、そして、また、虫を駆除する作業にうつる。

 それを、繰り返した。
 この5年間、ずっと、毎日、ずっと、ずっと、ずっと、

「……」

 センの動きと思考が、どんどん洗練されていく。
 『バグを殺すことに特化した動き』を徹底してきた結果、
 肉体の合理性が爆発的に成長した。

 外殻と臓器と脳とオーラと魔力と心が、『最適化』されていく。

 ワガママの追求によって花開く。
 貪欲に利己を煮詰めていった結果、とんでもない化け物が完成した。

「けれど……まだ……命は……完成していない」

 ひさしぶりに口を開いたセン。
 そのラリった瞳は、もはや、虫けらどもを見ていない。
 『ここではないどこか』を見つめている表情。
 『違う次元の何か』を追い求めている目。

「……俺は……いつ……完成するんだろう……」

 思考を介していない言葉。
 ほとんど無意識のうちに、

 ――センは、遠い未来を演算していた。


 そんな、ぶっ飛んだセンを尻目に、
 悪夢バグは、恐怖に染まった顔で、

「やばい……やばい……なんで、こいつ死なない……」

 『ゴキブリの行列を見つけた潔癖症』みたいな顔。
 言葉に出来ない『破格のおぞましさ』を前にして、
 悪夢バグの心が、目に見えて、深く疲弊してきた。

 ――問題なのは、心だけではなく、『中心』の方も疲弊してきた点。

「ごふっ……」

 突如、血を吐き出す悪夢バグ。

「ま、まずい……ストックが……もう……」

 その様を見たセンは、

「ん? なんだ? まさか、お前、死ぬ気か?」

 こごえるような瞳で、悪夢バグを睨みつけ、

「ダメだ。許さない。ようやく、次のステージが、おぼろげに見えてきたところなんだ」

 まるで、部下の有休を絶対に認めないパワハラ上司のように、

「死んでも頑張れ。まだまだ、俺の相手をしろ。完全に死ぬのは、俺の可能性が開いてからにしろ」

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