センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
44話 俺は強くなりすぎた。
44話 俺は強くなりすぎた。
「君が相手の場合、『小ギレイなだけの小細工』をいくら弄しても、そのイカれた資質で、たやすく跳ね返してしまうだろう。やるなら、真正面から。できるだけ、シンプルでデカい縛りをつけて――それが、もっとも有用な策だと判断した」
「……」
「さて、それじゃあ、はじめようか」
そう言うと、悪夢バグは、まがまがしいオーラで全身を満たした。
とんでもない圧力。
数値の暴力。
一瞬で、時空へ溶け込むと、
そのまま、センの背後を奪い取った。
それぞれの一瞬が、残像として世界に刻まれる。
神速が止まらない。
輝きの連鎖。
華やかに、舞うように。
そんな悪夢バグの突撃に対し、
センは、
「そこそこ速いけど、それだけだな」
最小の動きだけで、悪夢バグの足を払う。
「お前をこかすのなんざ超簡単」
言葉の通りに、
悪夢バグは、センにこかされた。
体幹が尋常ではないので、もちろん、すぐさま体勢を取り戻すが、
「……っ??!!!」
悪夢バグの顔面は、一瞬で噴出した脂汗で一杯になっている。
「……い、今……何をした?」
その問いかけに、センは、アクビをしながら、
「かるく足をひっかけただけだけど? 深淵閃風でこかしてやろうかとも思ったけど、お前の動きがあまりにノロすぎて、グリムアーツを使う気にすらならなかった」
「……」
「悪いけど、どうやら、俺は強くなりすぎたらしい。お前は、数値も戦闘力も、アダムを超えているけど、劇的に差があるわけじゃない。その程度の強さで俺をどうにかするのは無理だと思うぞ。……ちなみに、言っておくと、あそこにいる魂を狙って異次元砲を放つ――というチンケな作戦に関してだが……まあ、どうしても実行したいなら、すればいいと思うけど、俺の前で、その大きなスキをさらすデメリットについては熟考すべきだと、俺は思うけどな」
「……想定外の強さだ……センエース……正直、ナメていた……まさか、ここまで強くなっているとは……」
そこで、悪夢バグは、オーラの質を変えて、
「ウォーミングアップで疲れている余裕はなさそうだ……さっそく、本番といこう」
そう言った直後。
悪夢バグは、胸の前で両手を合わせた。
祈っているのではない。
ただ、心の形を示しているだけ。
「きてくれ、副官」
その呼び出しに応じる形で、
『悪夢バグの足元に描かれたジオメトリ』から、
悪夢バグよりもさらに虫感が強くなった虫人間が登場する。
「あのセンエースってガキ、想像していたよりも、はるかに強そうだなぁ! 殺しがいがあるってもんだぜ! くはははぁ!」
粗野で荒々しい呼吸。
悪夢バグの副官は、愚直で脳筋な前陣速攻タイプ。
――副官は、無造作にオーラを暴走させつつ、
「待ちは悪手! というわけで、最初から、全開で叩き潰す! それが最善! そうだろ、グレートバグ・ナイトメア!」
「まさに、そのとおり。余力を残さず、全員の全力でセンエースを踏みつぶそう」
そのオーダーを受けて、副官は、
ナイトメアソウルゲート内のあちこちに、
無数のジオメトリを刻み込む。
そのおびただしい数のジオメトリから、
「ギギ……」
『薄羽の生えたトラックサイズのでかいサソリ』みたいな虫が、
どんどん、どんどん、召喚されていく。
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