センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

44話 俺は強くなりすぎた。


 44話 俺は強くなりすぎた。

「君が相手の場合、『小ギレイなだけの小細工』をいくら弄しても、そのイカれた資質で、たやすく跳ね返してしまうだろう。やるなら、真正面から。できるだけ、シンプルでデカい縛りをつけて――それが、もっとも有用な策だと判断した」

「……」

「さて、それじゃあ、はじめようか」

 そう言うと、悪夢バグは、まがまがしいオーラで全身を満たした。
 とんでもない圧力。
 数値の暴力。

 一瞬で、時空へ溶け込むと、
 そのまま、センの背後を奪い取った。

 それぞれの一瞬が、残像として世界に刻まれる。
 神速が止まらない。
 輝きの連鎖。
 華やかに、舞うように。

 そんな悪夢バグの突撃に対し、
 センは、

「そこそこ速いけど、それだけだな」

 最小の動きだけで、悪夢バグの足を払う。

「お前をこかすのなんざ超簡単」

 言葉の通りに、
 悪夢バグは、センにこかされた。

 体幹が尋常ではないので、もちろん、すぐさま体勢を取り戻すが、



「……っ??!!!」



 悪夢バグの顔面は、一瞬で噴出した脂汗で一杯になっている。

「……い、今……何をした?」

 その問いかけに、センは、アクビをしながら、

「かるく足をひっかけただけだけど? 深淵閃風でこかしてやろうかとも思ったけど、お前の動きがあまりにノロすぎて、グリムアーツを使う気にすらならなかった」

「……」

「悪いけど、どうやら、俺は強くなりすぎたらしい。お前は、数値も戦闘力も、アダムを超えているけど、劇的に差があるわけじゃない。その程度の強さで俺をどうにかするのは無理だと思うぞ。……ちなみに、言っておくと、あそこにいる魂を狙って異次元砲を放つ――というチンケな作戦に関してだが……まあ、どうしても実行したいなら、すればいいと思うけど、俺の前で、その大きなスキをさらすデメリットについては熟考すべきだと、俺は思うけどな」

「……想定外の強さだ……センエース……正直、ナメていた……まさか、ここまで強くなっているとは……」

 そこで、悪夢バグは、オーラの質を変えて、

「ウォーミングアップで疲れている余裕はなさそうだ……さっそく、本番といこう」

 そう言った直後。
 悪夢バグは、胸の前で両手を合わせた。
 祈っているのではない。
 ただ、心の形を示しているだけ。

「きてくれ、副官」

 その呼び出しに応じる形で、
 『悪夢バグの足元に描かれたジオメトリ』から、
 悪夢バグよりもさらに虫感が強くなった虫人間が登場する。

「あのセンエースってガキ、想像していたよりも、はるかに強そうだなぁ! 殺しがいがあるってもんだぜ! くはははぁ!」

 粗野で荒々しい呼吸。
 悪夢バグの副官は、愚直で脳筋な前陣速攻タイプ。

 ――副官は、無造作にオーラを暴走させつつ、

「待ちは悪手! というわけで、最初から、全開で叩き潰す! それが最善! そうだろ、グレートバグ・ナイトメア!」

「まさに、そのとおり。余力を残さず、全員の全力でセンエースを踏みつぶそう」

 そのオーダーを受けて、副官は、
 ナイトメアソウルゲート内のあちこちに、
 無数のジオメトリを刻み込む。

 そのおびただしい数のジオメトリから、

「ギギ……」

 『薄羽の生えたトラックサイズのでかいサソリ』みたいな虫が、
 どんどん、どんどん、召喚されていく。


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