センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

82話 それでは入社試験を開始しようか。


 82話 それでは入社試験を開始しようか。

「降参する。まいった。貴殿の強さは理解した。降伏する。一度、断っておいてなんだが、『先ほどの提案』をぜひ受け入れさせていただきたい。今日より、我々は、あなたの下につく。だから、どうか、殺さないでいただきたい」

「――と、言っておりますが、師よ、いかがいたしますか?」

 ヒエンが、ゾメガの視線の先を追うと、
 黒髪のナイトが、壁際に背中を預け、腕を組んだ状態で、ヒエンたちを見つめていた。

(い、いつから?! まったく、気配に気づかなかった……そ、そんわけがあるか? ゾメガとの戦闘に集中していたとはいえ……いや、集中していたからこそ、ありえない。全方位に気を配り、意識の死角を殺そうと努めた……なのに……わずかも気配を感じなかったなど……そんなこと……)

 全力で動揺しているヒエンに、黒髪のナイト――センは、

「お前ら、知ってた? 人を生き返らせるのは、死ぬほど難しいんだが、死者の思念を現世に顕現させるだけなら、ある程度の魔力をつぎ込むだけでも可能ってこと」

 脈絡もなく、急にそんなことを言われて、ヒエンたちは返答に困った。
 そもそも、彼が何者なのかすら分からない。

(さっき、ゾメガは、あの青年のことを『師』と呼び、敬語を使っていた……ということは、ゾメガの上位者? い、いや、そんなわけあるか? ゾメガは、王族級の力を持つ本物の超越者。ゾメガよりも上位の存在など、いるとは思えない……)

 センが何者なのかと悩んでいるヒエンに、
 センは、続けて、

「初手から、本気でゾメガに平伏していれば、その決断力と判断力を買って、即雇用していたが、お前らは、ゾメガの高みを知ったから日和っただけ。……つぅか、本気でゾメガの下につくつもりはなく、ふところに潜り込もうとしているだけ」

 思惑を言い当てられて、ヒエンは表情をこわばらせた。
 暗部の人間なので、感情をそのまま表に出すような無様はさらさないが、人間である以上、本気の動揺を完璧に隠すことは不可能。

「いえ、われわれに、そのような裏の意図などは存在しません。本気でゾメガ殿の力に感服したため――」

 と、精一杯の言い訳をするヒエン。

 センは、そんなヒエンの言い訳をシカトして、
 自分の言いたいことだけを口にする。

「というわけで、テストをさせてもらう。みごとクリアできたら、お前らはゾメガの配下になれる」

「っ……」

 センの空気感を見て、『言い訳は無意味だ』と理解したヒエンは、ギリっと奥歯をかみしめながら、

「く、クリアできなければ?」

「ん? さぁ、知らんけど……たぶん、死ぬんじゃない?」

「……」

「さて、それじゃあ、さっそくはじめようか」

 そう言いながら、センは両手で複数の印を組んだ。
 その直後、ヒエンたちの周囲に、無数のジオメトリが描かれる。
 そして、その無数のジオメトリから、
 数えきれないほどの『実体のない、ユラユラしている影』が出現した。
 その影たちは、黒い涙を流しながら、ヒエンたちを睨んでいる。


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品