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56話 不愉快な言い訳。


 56話 不愉快な言い訳。

「庶民は、黙って王族に搾取されていろ――と、そういうわけか?」

「国民が国のために働くのは当たり前のことだ」

「アホみたいな重税を課して、さんざん民を苦しめておいて、よく言う」

 バーサミー王の言葉はすべて『醜い言い訳』でしかない。
 確かに、『王族が国の盾になっている』という部分もゼロではない。
 だが、王が国を守るなど、それこそ当たり前の話。
 それなのに、『守ってやっているのだから』と、『多大な見返り』を求めるなど、王のするべきことではない。

 そんな『帝王学的な根本の話』をぬきにしても、
 基本的な倫理・道徳の観点から言って、
 グリドの王族は、あまりにひどすぎる。

 侯爵令嬢トワネの人間性は本当にクソなのだが、
 王族連中は、みな、ほぼ例外なく、トワネをこえているのである。

 国民を奴隷以下の待遇でこきつかい、徹底的に搾取して、
 それで得た富を、政治闘争の実弾として乱射する。
 歯向かった者は管理所に送られて、非人道的な拷問のオンパレード。

 じつのところ、『庶民の貧困』さえも、王族連中からすれば娯楽の一つ。
 まるで、アリの観察キットを眺めているかのように、
 苦しんでいる民衆を観察し、セーフティーという愉悦にひたる。

 そんな、クソすぎるグリドの腐った体制を、
 センは、この10000年間、ずっと見続けてきた。

 だから、センはグリドを粛清し、すべてを奪い取ると決めた。

 ――そんなセンの『深い怒り』が全く理解できていないバーサミー王は、
 いまだ、とうとうと、ハリボテの自己弁護に傾倒する。

「我々は、リブレイの半属国状態にある。いくつかの犠牲(おもに金)を払うことで、どうにか完全支配という状態からまぬがれているのだ。主権と誇りを守り続けるための必要な犠牲。つまりは尊い犠牲である」

「金を払って国を守っていますってことなら、国を守っているのは、汗水流して金を稼いでいる民であって、お前ら王族ではないじゃねぇか」

「王族が窓口にたっているからこそ、『交渉』がなりたつ。力のない庶民だけなら、とっくに国家主権をうばわれ、本当の意味での搾取を受けていただろう」

 バーサミー王は、
 両手を広げて、尊大な態度で、

「貴様のように何もわかっていないバカが、たまに、革命を起こそうとテロ行為を行う。そういった『世のことわりを知らないバカ』を黙らせるのも我々の仕事。われわれは忙しいのだ」

 そこで、それまで黙っていた『パラミの妹ラミル』が、

「いつも思うけれど、王族というのは、ほんと、損な役回りだわ。何もわかっていないバカのしりぬぐいばかりやらされて。ほんとに、いい迷惑。呑気に生きていればいい庶民がほんと、うらやましいわ」

 などと言いながら、バーサミー王に加勢するように、
 攻撃系の魔法を、ネオ・ヘルズ覇鬼にぶちこんでいく。
 ――そのことで、

「グッ……ギガァッ!」

 『センカスタムを受けたネオ・ヘルズ覇鬼』が、
 『本当に優秀なモンスターである』というのが、
 ハッキリと証明された。


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