センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
48話 殴り込み。
48話 殴り込み。
――磨き上げた拳で、バッパーの腹部に風穴を開けたセン。
最初の数秒はピクピクしていたバッパーだが、
すぐに、ピクリとも動かなくなった。
それを確認してから、
また、『拡声』の魔法を使い、
「こんな感じで、てめぇら全員、殺していくから! 首を洗って待っていろ!」
あまりに豪快すぎる宣戦布告をかましたあとで、
センは、バッパーの体を時計塔のてっぺんからひっぺがし、
地面に降りると、回復魔法をかけて、バッパーを蘇生させる。
まだ、完全に死んでいなかったので、
『反魂』のような、クソ面倒くさい儀式を行う必要はなく、
高位の魔法で臓器を回復させるだけで、どうにか蘇生させることはできた。
その後、いくつかの魔法を使い、完璧に死んだとしか思えないよう偽装すると、
その死体を、また、ブロールの肩に担がせて、
「さて、じゃあ、殴り込みにいくか。グリドの上層部は、大量の兵を差し向けてくるだろう。というわけで、トワネ、その露払いを、お前に任せる。全力で暴れて、兵どもを蹴散らしてくれ。頼んだぞ」
ポンと肩を叩かれるトワネ。
その顔は、真っ青になっている。
センの回復魔法で、『ココに殴られた傷』は回復しているが、
メンタルの方は、現在進行形でボロボロになっている。
「こ、こんなことをして……こ、殺されますよ……グリドの全軍を、こんな少数で、正面から迎え撃つなんて……」
「俺とブロールとココは死なないが、お前だけは死ぬかもな。ある程度、補助はしてやるつもりだが、気を抜けば、普通に死ぬと思うから、全力で頑張れ。死ぬ気で道を作るのであれば、今後も奴隷として生かす方向で考えてやるよ」
「ぉ、おねがい……も、もう、イジメないで……反省していますからぁ……う……ぅう……ひっ……ひぃい……ひっく……ひっく……」
ぼろぼろと、弱者の涙を流してみせるトワネ。
普通の男なら、その涙にコロっと騙されるかもしれないが、
センは、
「好きなだけ泣いていいが、干からびるまで泣いても、状況は何ひとつ変わらないぞ。一つだけアドバイスさせてもらうが、涙で視界がブレていたら、死ぬ確率が高まるから、泣きやんだ方がいいと、俺は思うぜ」
「……」
センの『どこまでも冷たい言葉』を受けて、トワネは泣くのをやめた。
彼女は、涙を自在にあやつれる。
これまで、その涙を使って、まわりの男を篭絡(ろうらく)してきたが、
(だめだ……この男には通じない……この男の視界に、私はまったくうつっていない……)
トワネはクズだが知性がないわけではないし、『女性』としてのスペックは、むしろ、かなり高い方。
だから、理解できる。
センエースが相手だと、どれだけ、女としての手練手管を駆使しても、
ほぼ完全シカト状態で袖にされるだけだろう、と。
(どうしよう……どうしよう……誰か助けて……この状況から、私を救い出して……おねがい、おねがい、おねがい……っ)
奥歯をギリギリとかみしめながら、
『救いのヒーロー』の登場を待ちわびる。
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