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31話 『アダム』視点(1)


 31話 『アダム』視点(1)


 私の名はアダム。
 進化する前の私は、全モンスターの中でも最弱と言われている『エビルアメーバ』だった。
 最弱の種族として生まれたが、
 最強のプラチナスペシャルである『吸収』をもって生まれてきたので、
 私は、死闘につぐ死闘をのりこえ、
 六大魔王の一人を殺せるレベルまで駆け上がることが出来た。

 今、私は、魔王ユズ主催の『天覧(てんらん)試合』に参加している。
 すでに、予選のメンバーは全員ぶっとばした。

 六大魔王以上の力を持つ私に、そこらの冒険者や軍人ごときが勝てるわけがない。


「ウワサ通りの、素晴らしい実力ですね、アダムさん」


 サクっと優勝した私に、
 魔王ユズは、そう言って、賞金を渡してきた。

 金の使い道はいくらでもあるので貰っておく。

 ……しかし、なんだな……
 魔王ユズは『性悪(しょうわる)のクソ女』だと聞いていたが、
 見た感じ、そこまでカスには見えない。

 おそらく『本性を偽(いつわ)っている』……のだろうけれど、
 あまりにも、一般人的というか……邪悪の気配が少ないので、
 毒気(どくけ)を抜かれてしまった。
 本当なら、このタイミングで、そく殺してやるつもりだったが、
 私は、つい、こいつと少し会話をしてしまう。

「アダムさん……あなたの目的は『私を倒すこと』だとお見受けしましたが、どうでしょう?」

「ああ。その通り。私は、すべての魔王を殺し、最強になる」

「……なぜ、そこまで、力を求めるのか、お聞きしてもいいですか?」

「……」

 ハッキリ言おう。
 それは、私にも分からない。

 ただ、私は、生まれた時からずっと、
 『何か』を探していた。

 とても大事な何か……
 それは、きっと、私の全てを満たしてくれる。
 そう信じてやまない『何か』……

 頭の中で、おぼろげにイメージは浮かんでいる。

 『この上なく尊き王』のイメージ。
 私が、『命をかけて尽くすべき相手』……



 そんな『誰か』が、たぶん、どこかにいる。



 確証はないが、漠然(ばくぜん)と、そう思う。
 その『フワフワしたイメージ』だけを追い求めて、
 私は、ひたすらに、力を求めてきた。

 もしかしたら、『この想い』は、ただの妄想かもしれない。
 『この世の全てを包み込む光のような存在』など、どこにもいないのかもしれない。

 けれど、心が渇望(かつぼう)している。
 私は、飢(う)えて仕方がないのだ。


 私は、欲しい。
 『私の全て』をささげるに値(あたい)する御方を……私は、ずっと、魂の底から求め続けている。


「アダムさん?」

 黙り込んでしまった私に、
 いぶかしげな目をむけてくる魔王ユズ。

 私は、さらに一拍(いっぱく)をおいてから、

「……あんたに教える義理はない」

 魔王ユズごときに、『私の渇望(かつぼう)』を伝えたところで意味はない。
 少なくとも、こいつではない。
 私が求めているものは、こんなつまらない女ではない。

「そうですか……残念です」

 魔王ユズは、本当に、残念そうにそう言ってから、

「あの、アダムさん……信じてもらえないかもしれませんが、私は、心をいれかえました。この国の民のために、尽くしていこうと考えています。ですので……できれば……見逃していただけませんか? 『あなたの配下になれ』というのであれば、喜んで、あなた様の下につきます。この国の民(たみ)も、軍も、あなた様にしたがいます。ですので、どうか……」

「いらない。私が求めているのは、私自身の力だ。軍としての力などなんの意味もない。『民』などという『足手まといのゴミ』をかかえるのも冗談じゃない。そんな贅肉(ぜいにく)はいらない。私は、私が『美しく輝くこと』にしか興味がない」

「……私は……『大きな力』には、それに比例する『大きな責任』が伴うと考えております。アダムさん、あなたは強い。本当に、お強い。少なくとも、私よりは強い。……きっと、あなたは、この世で一番の才覚をお持ちでしょう。先ほどの、予選での戦いぶりを見ていて思いました。あなたは、世界一になれる器。きっと、いつか、龍の女神から報酬を受け取ることになるでしょう。それほどの存在であるあなたは、王になるべき……いえ、『王』を束ねる『皇帝(こうてい)』になるべきだと私は考えます。『最も気高き力を持つ者』が『弱い者たち』のために力を振るう。それが、世界のあるべき姿だと、私は――」

「ペチャクチャうるさい。お前がどう思っているかなど、どうでもいい。私は、私の想いだけを求め続ける」

 そう宣言してから、
 私は、魔王ユズに殴りかかった。

 すると、
 隣にいたモブキャラみたいなヤツが、

 私の拳を、片手で受け止めやがった。

「……師は、本当に、改心なされたご様子。師は、確かに、これまで、多くの過(あやま)ちを積み重ねてきた……しかし、ここ最近の師は、魔王にふさわしい働きをしてこられた。もはや、それが『ただのポーズ』でないことは明白。師は、この国にとってなくてはならない存在。貴様のような、大義のない『力を求めるだけの化け物』に、殺させるわけにはいかない」

「……1001号……ありがとう……あなたは、本当に優しいナイトですね。大好きです」

 などと、どうでもいいやりとりをしている二人を尻目に、
 あたしは、バックステップで距離をとる。

 あの『センイチゴー』とかいうやつ……
 すさまじく強いな……
 存在値だけなら、私と同等か、それ以上……

 本当におどろいた……
 なんで、あれほどの力を持つ者が、
 魔王ユズの下についているんだ?
 意味がわからん……

 そう思っていると、
 魔王ユズが、

「私は、この国の民を支えていかなければなりません。ここで死ぬわけにはいかないのです。あなたが王になってくれるのであれば、この身をささげてもかまいませんが……しかし、あなたには、王になる気がないのでしょう? ならば、この王位は、ゆずれません。私は決めたのです。この国から『すべての苦痛』をとりのぞく、と。『そのために必要な痛み』は、私がすべて引き受けます」

 そう言いながら、
 魔力とオーラを練り上げていく。

 魔王ユズ。
 六大魔王に匹敵すると言われているだけあって、膨大な力をもっている。


「私と1001号は、一心同体。あなたは確かに強いですが、私たち二人を相手にして勝てるとは思わないでいただきたい」


「はっ……ぬるいんだよ」

 私は、ぺろりと唇をなめる。

「ひとりで地獄をこえる気概(きがい)もねぇやつが、私に勝てるワケないだろう」

 ……私は超えてきた。

 『最弱のエビルアメーバ』として生まれ、
 周りは、すべて、私より強く、
 私は、捕食(ほしょく)される側(がわ)の弱者だった。

 けど、乗りこえてきた。
 死闘につぐ死闘を乗りこえて、
 私は、今日にたどりついた。


 ――そんな私を、ナメるなよ、小娘。


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