センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

25話 テンプレを殺すセンエース!


 25話 テンプレを殺すセンエース!

 思いっきり殴りかかってきたガチムチ。

 ハッキリ言う。
 全然見えん。

 こいつのパンチ、めちゃくちゃ早い。
 もちろん、アポロやヘブンズキャノンの攻撃よりは下だが、

「うげはっ!!」

 よけることなどできず、
 豪快に吹っ飛ばされる俺。
 カベに激突して、血を吐いた。

 こんな状況だっていうのに、まわりは完全に見て見ぬふり。
 というか、楽しそうに、ヤジウマしている。

 冒険者ギルドの職員も、
 『はいはい、いつものこと』
 みたいな感じで、完璧にシカトしてくれている。

「……ははは……」

 この状況が、あまりに面白すぎて、
 つい、笑ってしまった。

 俺は立ち上がって、
 ガチムチの方へと歩いていく。

 ガチムチは、ニタニタと笑いながら、

「このダーバン様の一撃をくらって立ち上がれるとは、なかなか根性があるじゃねぇか。しかし、次は、さすがに耐えられないぜ」

 などと言いながら、もう一度殴ってこようとしたので、

「おい、ダーバンさんよぉ。今度はこっちの番だろ」

 にぎった拳をチラつかせながらそう言ってやると、
 ダーバンは、ニィと小バカにするように笑って、

「いいだろう。その『枝(えだ)キレ』みたいに細い腕で、力いっぱい、殴ってこい。ほれ、ほれ、どうした。どこでもいいぞ」

 『ウザい顔』で煽(あお)ってくるダーバンさん。

 俺の怒りが臨界点(りんかいてん)を突破(とっぱ)する。

 それでは、これより『俺を小バカにした愚(おろ)かさ』を清算(せいさん)してもらうか。
 そうだな……ここから『5日』ぐらいは粘着(ねんちゃく)してやるか。
 こいつが、泣いて謝ってももう遅い。
 『頼むから帰らせてくれ』と、
 土下座する勢(いきお)いで謝っても、もう、許してやらねぇ。

 俺の怒りがおさまるまで、
 とことん、『殴り合い』に付き合ってもらう。
 俺の拳ごときじゃ、お前はダメージを負わないだろう。
 だが、俺も、お前ごときの拳では、
 何千発もらっても死なないのだよ、ふふふ。

「さあ、いくぞ。ダーバンさんよぉ。絶望を数えろ」

 そう言いながら、
 俺が、にぎりしめた拳を、
 ダーバンの胸部にブチ当てようとしたところで、


「ふぇ?!」


 俺の背中から、
 ヘブンズキャノンが生えてきた。

 俺のヒョロパンチをサポートするように勢いよく飛び出して、
 ダーバンの胸部に、ズガァっと、風穴を開けてしまった。

「……ど、どぇえええ……」

 おどろく俺とは対照的(たいしょうてき)に、
 ダーバンは、静かなもので、
 白目をむいて、

「……ご、ふっ……」

 と、一度、大量に吐血すると、
 そのままバタリと倒れこんでしまった。

「あ……ぁ……」

 あまりにも唐突(とうとつ)すぎる『人を殺してしまった』という事実に呆然としていると、
 『後ろにいる酒神(さかがみ)』が、呑気(のんき)な声で、

「おお、さすがでちゅね、お兄(にぃ)。それが、噂のヘブンズキャノンでちゅか。すごいでちゅねぇ。オイちゃんのセブンスアイでも詳細が見通せないほどの力。いやぁ、ほんと――」

「んなこというとる場合か! アルブム、すぐに治してくれ! すぐにぃい!」

「オイちゃんたちは、お兄(にぃ)の冒険に手を出したらいけないんじゃないでちゅか? お兄が、そのカスに殴られた時、正直、そのカスの頭をカチ割ってやろうかと思ったんでちゅけど、お兄の言葉を思い出して、グっと我慢した、そんなオイちゃんの気持ちはどうなるんでちゅか」

「グダグダうるせぇ、黙ってろ、酒神! ――アルブム、はやく!」

「かしこまりました、セン様」

 返事をすると同時、
 アルブムは、

「欠損治癒(けっそんちゆ)ランク10」

 『存在値200ぐらいのヤツ』が使いそうな魔法で、
 ダーバンの胸部を回復させる。

「ごほっ……」

 ギリ死んではいなかったようで、
 どうにか、一命をとりとめたダーバン。

 周囲の人間が、ザワついている。
 『ダーバンを殴り倒した俺』に、
 奇異(きい)の目を向けている。

「え、あのガキ……今、なにした……?」

「まさか、あのダーバンを……一撃で倒したのか?」

「嘘だろ? ダーバンは、七つ星の英雄だぞ……」

「あっちの女も……今、ランク10の魔法を使ったか?」

「ランク10の回復魔法とか……最低でも、九つ星級の実力者ってことじゃねぇか……」

「ど、どういう連中なんだ……」


 時間とともに、
 周囲のザワザワが増していく。

 いたたまれなくなった俺は、
 ダーバンが『間違いなく生存(せいぞん)していること』を確認してから、

「最初にカラんできたの、そっちだから! 俺は悪くないからぁあ!」

 と、叫びつつ、
 逃げるようにして、
 冒険者ギルドを飛び出した。


 ★


 ある程度、離れたところで、

「ふざけんな、ちくしょう! なんで、こんなところで、ヘブンズキャノン、発動するんだよ! 3000回に1回じゃなかったのかよ!」

 と、つい、怒りを口にしてしまう。
 すると、酒神が、ヘラヘラしながら、

「3000回に1回しか発動しない力を、常時(じょうじ)、発動させることができるとは、さすが、お兄。恥ずかしげもなく『この上なく尊い命の王』を名乗るだけのことがありまちゅね」

「そんな、イカれた称号(しょうごう)を自分から名乗ったことは一度もねぇ!」

 俺は、『運』の方も『凡人』で、
 いつだって、良くも悪くもない『普通』のはずなのに、
 どうして、あんな最悪なタイミングで役満(やくまん)を引いてしまうかなぁ……

 どうせなら、『すごく強い敵』と戦っている時とかにしてくれよ、まったく……


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品