センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

10話 『ユズ(没落サイド)』視点(3)。


 10話 『ユズ(没落サイド)』視点(3)。

 『頭への直撃』だけは、どうにか回避したけれど、

「う、うぅ……い、痛いぃ……」

 ホブゴブリンの一撃を受けた私は、その場に倒れこむ。
 逃げたいけれど、痛みと恐怖で体がまったく動かない。

 怒りがわいてきた。
 なんで、この私が、こんな目にあわないといけないんだ。

 ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな!!



「――か、火球(かきゅう)ランク5!!」



 セイラは、魔法が使えた。
 だから、冒険者として働くことが出来ていた。
 それなりに『強力な魔法が使える』ということで、
 冒険者としてのランクも、そこそこ高かった。

 『ランク5の魔法』は、『存在値70クラス』の魔法。
 だから、ホブゴブリンが相手でも、ダメージを与えることはできる。

 実際、私の魔法を受けて、
 ホブゴブリンは私を強く警戒した。

 このまま、私のことを『強い』と勘違いして、逃げてくれれば……

 そう思っていたのだが、
 ホブゴブリンは、


「――『氷術(ひょうじゅつ)ランク3』――」


 軋(きし)む声だが、正確に詠唱(えいしょう)している。
 エンチャントの魔法を使って、
 こんぼうに、冷気の力を込めた。

 ……中級以上のモンスターになってくると、
 『魔法を使えるヤツ』も多い。

「くそ……引く気なし……好戦的なタイプ……」

 『魔人に進化していないモンスター』に知性はない。
 RPGの敵キャラと同じく、『定められた行動』をとるだけ。
 こいつは『ガンガンいこうぜ』のタイプ。

 私は、しかたなく、ナイフを構える。
 このナイフに込められた『転移』はクールタイム式。
 あと、半日たたないと、転移の魔法は使えない。

 最悪。
 『セイラ』のせいで、ろくな目にあっていない。

 絶対に、殺してやる。
 1001号がなんと言おうと関係ない。
 とことん痛めつけてやる。

 ――と、生きるためのモチベーションを上げていると、
 ホブゴブリンがおそいかかってきた。

 ナイフで応戦しようとするが、


「きゃあああっっ!!」


 普通に吹っ飛ばされてしまった。
 魔法職の『セイラの体』が、『接近戦(せっきんせん)タイプのホブゴブリン』に殴り合いで勝てるわけがない。

「……い……いたいぃ……いたいぃいい……」

 こんなに痛いのは、生まれてはじめて。
 これまで、ずっと、私の人生はバラ色だった。
 望むまま、幸せに生きていられた。

 それなのに……
 なんで、こんな目に……
 私が何をしたっていうんだ……


「ぎぎぎぃいっ!」


 ホブゴブリンの殺気が増していく。
 私を殺そうと、『こんぼう』をふりまわす。

 冷気の魔法がこめられているので、
 あたると凍傷(とうしょう)状態になる。

「う、うぅう……や、やめてっ……やめてよ! 死ぬ! 死ぬから!」

 さけんでみたが無意味。
 相手は、ただのモンスター。
 命乞(いのちご)いなど無意味。

「たすけ……たすけて……っ……」

 私は、必死になって、生き残るために頑張った。
 がんばったのに。
 誰も助けてくれない。
 ホブゴブリンは、ずっと、私を殺そうとしている。

 ふざっけんな!

 この私が命乞いまでしたんだぞ!
 助けるか、見逃すのが、普通だろ!!
 この私だぞ!
 私が生きることを求めているんだ!

 だったら助かるべきだろ!
 なんで、こんな痛い目にあうんだぁあ!

 ふざけるなあああああああああああ!!


「ナメんなあああああああ! 火球ランク5ぉおおおお!」


 ――さっきよりも『大きな魔力』を込めて、
 私は、ホブゴブリンに火球を投げつけた。

「ギギィイッ!」

 さっきよりもダメージを受けている様子。
 けど、全然、死にそうではない。
 たぶんだけど、あと、5~6発は入れないと死なないと思う。

 ……もう、そんな魔力残ってないよ。
 今の私からすれば、この『火球ランク5』って『メラゾ〇マ』みたいなものだから、
 消費魔力量がえぐいんだ。

 もうMPが底をつきてる……
 もう、無理……


「……や、やめてよ……死ぬじゃん、ほんとに……私が死んでいいの? だめでしょ?」


 私は、世界に問いかける。
 私は、神様に愛されている。
 神様に愛されている私を、殺すワケないよね?

「ぎぎぃい!!」

 ホブゴブリンが、
 私の頭めがけて、こんぼうを振り回してきた。

 ――あたる。
 ――死ぬ。

 そう思った瞬間、全部がスローモーションになった。
 走馬灯(そうまとう)が走った。
 あ、ほんとうに、走馬灯ってあるんだ。

 ……楽しい人生だったなぁ。
 バカな女や、ブスな女をボコボコにできて、
 本当に、楽しい人生だった。


 ――と、そんな風に、
 走馬灯にひたっていると、



「――極爆雷撃(ごくばくらいげき)ランク19」



 天から雷が降(ふ)ってきて、
 ホブゴブリンは、

「ギャアアアアアアアアッッ!!」

 断末魔(だんまつま)をあげて、真っ黒コゲになった。
 一撃で、完全に死んだ。

 とんでもない雷の魔法だった。

 私は空を見上げる。
 すると、そこでは、
 『入れ替わる前の私』でも敵(かな)わないほどの美女が空に浮いていた。

「……あ……ぁ……」

 彼女のことを、私は、知っていた。
 なぜなら、『昨今(さっこん)の魔王(まおう)界隈(かいわい)』で、もっとも有名な女だから。

「……アダム……」

 『雷神の異名を持つ六大魔王の一人』を一対一で殺して、その力を奪い取ったというウワサの放浪(ほうろう)の魔人……

 ウワサは本当だったようで、アダムは、『雷を切り抜いたような戦闘服』に身を包んでいた。
 あれは、雷神が着ていた服……たぶん、コスプレではなく、ウワサどおり、雷神の力を奪い取ったのだろう。


 ――アダムは、
 ホブゴブリンを殺した直後、
 私の方にギラっと視線を向けてきた。

 その目は、まるで飢(う)えた野獣。

「……そこのブス、とてつもなく邪悪な気配を纏(まと)っているな。それほどまで『醜(みにく)い魂』も珍しい」

 そう言いながら、私の目の前までおりてきて、

「フェイクオーラで、本来の力を隠しているようだが……私のセブンスアイはごまかせない。貴様、強いな? 奪わせてもらうぞ、その力」

 そう言いながら、
 アダムは、私の心臓に、

「ぐふぅうう!!」

 右腕をめりこましてきた。
 私の胸部(きょうぶ)は、まるで豆腐のようにあっさり砕けて、
 心臓はバラバラに飛びちった……


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