センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

幕間 ヒロインと混浴するセンエース。


 幕間 ヒロインと混浴するセンエース。

 闘いのあとで、俺は、
 『女神の城』に設置されている大浴場(だいよくじょう)につかっていた。

 実は、俺の『中』にいるアポロとは、多少、コミュニケーションが取れる。
 色々と話を聞いたところ、この城は、色々な設備が整っているとのこと。
 アポロに聞きたいことは多々あったが、とりあえず、まずは風呂に入りたかった。

 ――アポロとの闘いは、死ぬほどしんどかったので、
 あたたかい湯が骨身にしみる。

 のんびりと、大浴場を楽しんでいると、

 背後から、

「おお、すごいでちゅねぇ。めちゃくちゃ豪華な浴場じゃないでちゅか」

 酒神の声が聞こえてきた……



 ……え、うそだろ?



 ぇ、俺、『一人で入る』って言ったよね。
 『邪魔するな』って、確かに言ったよね。

 ……え、マジか、あいつ……
 ラリってんのか、あのバカ……

 俺は、その場で固まってしまう。
 『嘘であってくれ』と願ったが、しかし、現実は無慈悲(むじひ)だった。

「いい湯でちゅねぇ」

 などと言いながら、
 酒神は、俺と同じ湯船に入ってきて、
 となりに腰かけると、
 おたがいの腕がふれる距離を陣取った。
 ちなみに、俺は、酒神を見ないよう目を閉じている。

 ここで、こいつをガン見する勇気などない。
 アポロや蝉原には立ち向かえるが、『この状況』には立ち向かえない……
 ヘタレな俺を笑ってくれ。

「あ、このお湯、特別な効能(こうのう)がある感じでちゅね。肌がツヤツヤになっていくのを感じまちゅ。ほら、お兄(にぃ)、スベスベでちゅよ。さわって確かめてみてくだちゃい」

 などと、イカれたことをぬかしているバカ女。

 俺は、下半身が充血しそうになるのを、
 鋼(はがね)の根性でおさえつける。

 クールにいけ。
 ここで、下半身を大きくさせたりしたら、あまりにダサすぎる。

 煩悩(ぼんのう)を捨てろ。
 素数(そすう)を数えるんだ。
 俺の根性をナメるなよ。

「お兄、聞いてまちゅか?」

 なんて言いながら、酒神が、
 俺の腕を、指先でツンツンしてくる。

 やめろ、ボケえぇ。

 意識がみだれる。
 ダメだ。
 このままだと、壊れる。

 そう思った俺は、

「さ、酒神……お前、まさか、裸(はだか)じゃないだろうな?」

「入浴中なんだから、裸に決まっているじゃないでちゅか。なにいってんでちゅか」

「何言ってんだ、と言いたいのは俺の方だが……とりあえず、いったん、ガマンしてやる。冗談かガチか分からんが、もしマジなら、せめて水着を着ろ。これは命令だ。ガチの命令だ」

「めんどくさいでちゅねぇ。……まあ、でもいいでちゅよ」

 そう言って、酒神は、いったん、風呂から出ていった。
 俺は動けなかった。
 今、動くことは、死を意味する。

 全力で精神を統一させていると、
 酒神の戻ってくる音が聞こえた。

「水着を着ているか?」

 正直、水着でもキツいんだが、
 しかし、裸(はだか)よりはマシだ。

「きまちたよ」

 俺は、その言葉を信じて、
 ソっと目を開けてみた。

 すると、全裸(ぜんら)の酒神が、俺の目の前で、
 煽情的(せんじょうてき)なポーズをとりつつ、
 妖艶(ようえん)な笑顔で、俺の目をジっと見つめていた。

「何がしたいんだ、てめぇええええええ!!」

 あわてて、両手で顔をおおう俺。
 ダサい……今の俺は、本当にダサい……
 最後までクールでありたかったが、
 しかし、この状況下では、カッコつける余裕がなかった。

 頭が爆発しそうだ。
 ふざけんなよ、マジで……

「お兄の命令通り、ちゃんとお兄を見てあげたんでちゅよ」

「服の話をしとるんじゃ、ぼけぇええ! 水着きてこいっていっただろう!!」

「あ、忘れてまちた。だめでちゅねぇ。オイちゃん、最近、ボケがきているのか、3歩ぐらい歩いたら、何をしようとしていたのか、だいたい忘れちゃうんでちゅよ」

「ごちゃごちゃぬかさんと、さっさと、着替えてこい! というか、出ていけぇえ! 俺、言っただろ! 一人で風呂に入るってぇええ!」

「ああ、そういえば、そんなことを言っていたような気がしないでもないでちゅね」

「言ったんだよ!」

「ま、そんなことはどうでもいいでちゅ」

 なんて言いながら、
 酒神は、俺のとなりにすわり、
 たがいの腕がふれ合うぐらいの距離を陣取る。


「命がけで、オイちゃんを守ってくれたご褒美(ほうび)として、宇宙一の女神であるオイちゃんと混浴する権利をあげまちゅ」


「……お前が美人なのは認めるが、性格の方は、普通に最悪だと思っているからな。お前、やべぇぞ、マジで。やばいっていうか、もう怖ぇ」

「でも、お兄って、『性格が悪い女』の方が好きでちゅよね?」

「勝手なことをぬかすな。俺のタイプは、おしとやかな大和撫子(やまとなでしこ)だ」

「そんなもん、この世に存在しまちぇんよ。女はみんな、心に化け物を飼っている悪魔でちゅ」

「……なんで、お前は、そんなに歪(ゆが)んでいるんだ……」

 と、俺がつぶやいた直後のこと、

 酒神が、俺の腕に、ギュっと、抱きついてきた。
 胸の感触がダイレクトに伝わってくる。
 ふにゃり、という効果音が脳内をうめつくす。

 ……脳がふっ飛ぶ……

「な、なにを……している……んだ……?」

 思考停止寸前で、俺は酒神にたずねる。

「感謝のしるしの大サービスでちゅ」

 ここまで、よく我慢した俺。
 けど、もう無理。

「……酒神……マジで……勘弁してくれ……たのむ……」

 俺が、本気の声でそう言うと、

 酒神は、一度、タメ息をついてから、

「お兄(にぃ)って、損(そん)な性格してまちゅねぇ……ま、そういうところも、嫌いじゃないでちゅけどねぇ」

 なんてことを言いながら、
 風呂から出ていった。


 残された俺は、

「……ふ……ふぅうぅぅうう……」

 と、一気に脱力して、

「た、耐えたぁ……ギリギリだった……」

 いや、まあ、正直、耐えてはいなかったが、
 しかし、耐えたということにさせてもらいたい。

 まだ、しばらく湯舟(ゆぶね)から出られそうにないが、
 しかし、それは、『そういう事』とは別の話だ。

 そう、俺はただ、風呂を楽しんでいるだけだ。

 もう、出たくて、出たくて、仕方ないぐらい、
 体が火照(ほて)ってたまらないのだが、
 しかし、それでも、なお入っていたいぐらい、
 俺は、風呂が大好きなのだ。

 ……そういうことにしておいてくれ。
 たのむから。

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