センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

6話 主人公、覚醒!! 完全無敵となるセンエース!!!


 6話 主人公、覚醒!! 完全無敵となるセンエース!!!

 蝉原の野郎……返事しねぇじゃねぇか。
 くそったれ。
 どこまでも腹の立つ野郎だ。

 『恥ずかしさ』を殺して、『本気の言葉』で『想い』を伝えたっていうのに……
 シカトされたら、俺、完全にただのピエロじゃねぇか、くそが……

 ……まあ、別にいいけどな。
 返事をしようがしまいが、命令は絶対だ。
 俺が死んでも、命令権は残る。

 これでいい。
 これが、こいつに対する一番の復讐(ふくしゅう)だ。

 ――だから、これでいい。

 そこで俺は、チラっとだけ、酒神に意識を向けた。
 ボロボロの姿だが、あいつは、生きている。
 俺を守るために受けた傷は、見ていて痛々(いたいた)しいが、
 しかし、あいつは、生きている。

 ……だから、これでいい。


「さあて、それじゃあ、最初で最後のクライマックスといこうかぁ! もう、いっそ、もっと燃えろよ、俺の命ぃい! どうせなら、限界まで咲(さ)かせてみせよぉやぁ!」


 ハイになった頭で世界を駆(か)け抜ける。

 ――俺が殴ると、アポロも殴り返してくる。
 『気室(きむろ)とのじゃれ合い』とは違う、ものすごく高度な殺し合い。
 これが、けっこう気持ちよかった。

 これから死ぬけど、
 『まあ、いいか』と思えた。

 ――蝉原ならうまくやるだろう。
 あいつは、クソ野郎だが、ガチでカリスマだ。
 マジでクソ野郎だが……俺よりは遥(はる)かに優秀だ。
 正直、『死ねばいいのに』と思っているが、
 あいつが、『出来る男』なのは事実。

 ぶっちゃけ、俺が生き残ったって、何もできねぇ。
 俺、マジで無能だからな。

 ――だから、これでいい。
 まあ、できれば、蝉原がこれから築(きず)き上げる『理想の世界』を、この目で見てみたかったが……まあ、いいよ。

 可能性を残せただけで、満足さ。

 さあ、死のう。
 最後に、でっかく、『命の華(はな)』を咲かせてみせよう。
 俺は、この世界に、『理想の種(たね)』を残せた。
 だから、そこそこ満足だ。


 ――龍の女神アポロ・テスタメントは本当に強かった。
 『絶死のアリア・ギアス』のおかげで、俺も相当に強化されているはずなのに、決定打を与えることはできなかった。
 正直、ボコボコにされた。
 存在値1200は伊達(だて)じゃなかった。
 骨が砕けた。
 肉が裂(さ)けた。
 ゲボ出るほど、脳をシェイクされたりした。


 ……そんな、死闘の果てに、
 アポロが、俺に対して、


「――清廉(せいれん)な命……高潔(こうけつ)な魂……な、なぜ、あなたのような男が……あの『邪悪の化身(けしん)』を……守ろうとする。そんなにもボロボロになりながら……なぜ、余(よ)の敵となる……」


 そんなことを言ってきた。
 俺は、痛みを我慢しつつ、
 ペっと、血を吐いてから、
 笑顔を浮かべて、

「……俺がお前の敵になった理由は一つ。お前が、こちらの話をいっさい聞かずに殺そうとしてきたから。……初手(しょて)をミスったな」

 俺は別に、聖人(せいじん)じゃないから、殺されかけたら殺し返すさ。

「蝉原という『最低な悪人』を見て、お前が焦(あせ)ってしまった気持ちも分からないではないが、お前は、もっと慎重(しんちょう)に行動するべきだった。平和的に、話し合いで解決すべきだった」

 『どの状況』においても『話し合いが最善』なんていうつもりはないが、今回に限っていえば、『話し合い』が最善手だったことは間違いない。

「まあ、お前のミスは、俺が清算(せいさん)しておいたから、安心しろよ、アポロ。蝉原はもう、『悪さ』が出来ねぇ。あいつの本質は『邪悪』なままだが、『善人としての行動しかとれない』なら、別に問題はないだろ?」

「あなたが……命を賭(と)して……あの邪悪なる者を……封(ふう)じ込めたということか……?」

「違うよ、勘違いするな。……俺は、俺のワガママを貫(つらぬ)いただけだ。あと、あいつのことが大嫌いだから、あいつが『一番いやがる復讐』をやらせてもらった。俺は陰湿(いんしつ)で、性根(しょうね)が腐(くさ)っているんだよ。そんだけの話だ」


「……これ以上ない高潔(こうけつ)な魂……ここまで美しい命を見たのは……はじめてだ……」


「お前、耳が死んでんのか? 俺は、ワガママな復讐を実行しただけ、っつってんだろ」


 そんな俺の言葉は、
 どうやら、アポロの耳には届いていない様子。

 なぜか、アポロは恍惚(こうこつ)の表情をしており、

「輝いている……ほんとうに……なんという美しい光……この世の全てを包み込む光……」

「なにも輝いてねぇよ。よく見ろ。今の俺なんざ、どっからどう見ても、ボロボロで、吐くほどみすぼらしい、ただの無能だろ。お前、ほんと、どうした? 頭、バグったか?」

「……余(よ)も……あなたの……力に……」

 そう言いながら、
 アポロは、俺の胸に手をあててきた。

 『何か』が注(そそ)がれていくのが分かる。

 これは……アポロの記憶……

 この暖(あたた)かさは、
 これまで、アポロが、この世界に捧(ささ)げてきた献身(けんしん)。
 ずっと、ずっと、アポロは、この世界を守ってきた。

 たった一人で、
 どんなに苦しい時も、
 世界を守るために、必死に……

 アポロは、『邪悪で巨大な力を持つ蝉原』に対し、普通にビビっていた。
 それでも、アポロは歯をくいしばって、前を向いて、
 命をかけて、蝉原に立ち向かった。


 ……すげぇ女だ。
 ……かっけぇじゃねぇか……


 彼女の『想い』にふれたことで、
 俺の脳が沸騰(ふっとう)した。
 心がパンパンになる。
 その結果、俺の口が、
 俺の意志に反(はん)して、
 勝手に開いた。

 気付けば、俺は、上半身だけのけぞり、
 空を見上げて、







「――プラチナァアアアア!! スペシャルゥウウウウウ!!」







 ノドをからして叫んでいた。
 『スペシャル』という概念(がいねん)は、説明書に書いてあったから知っている。
 『永遠人形』にも存在するシステムで、ようは『ユニークスキル』のこと。
 その最高峰がプラチナスペシャル。

 そういう設定は、もちろん、理解しているのだが、
 しかし、なぜ、ここで、俺が、
 『プラチナスペシャル』と口にしたのかは一切わからねぇ。

 勝手に口をついて出た……


 ほんと意味不明。
 てか、俺の体、『赤以外の色』で輝いてね?

 なんて思っていると、



 ――プラチナスペシャル『絶対的主人公補正(ぜったいてきしゅじんこうほせい)』、開眼(かいがん)――
 ――効果『心が折(お)れないかぎり、主人公は死なない』――



 また、声が聞こえた。
 あの『謎の声』……とは、ちょっと違う?
 よくわかんね。
 どっちも、声が加工されているみたいだから。



 ……てか、そんな『声の質』とか、どうでもいいけど、
 この『絶対的主人公補正』っていうスペシャル……ヤバくない?
 ようするに、俺、『不死身のスキル』を手に入れたってこと?

 などと、疑問に思っていると、
 頭の中に、『絶対的主人公補正』のえぐい特性がインストールされる。
 魂レベルで、俺は、このスペシャルについて理解する。

 いや、これ、マジですごいんですけど。
 無敵すぎるんだが。

 まあ、効果が強すぎる分、デメリットも当然あるわけだが。


「うぶぅおぇええええええっっ!!」


 俺の体から、『絶死のアリア・ギアス』が消えていく。
 その代償(だいしょう)として、俺は、
 『車酔いの100倍』ぐらいの『しんどさ』におそわれて、
 おもいっきり、ゲロを吐いてしまった。

 とにかく、頭がクラクラする。
 死にたくなるほどのツラさ。

 ――絶対的主人公補正は、心が折れない限り死なないスペシャル。
 『死ぬほどのダメージ』を受けた時、死なないかわりに、ゲロで溺(おぼ)れるほどメンタルがズタボロになる。
 まるで、俺の『心』を『殺しにくる』みたいに、とんでもない精神的な負荷(ふか)がかかる。


「うぇ……はぁ……はぁ……ナメんなよ……この程度で折れるほどモロくねぇぞ……俺は、勉強もスポーツも何もできないカスだが……昔から、根性にだけは、多少の自信があるんだ。実際、『蝉原に立ち向かえるほどの根性』をもっているヤツはそうそういねぇぞ」


 と、自分で自分を鼓舞(こぶ)していると、
 そこで、アポロが、バタリと倒れこんだ。

 今にも死にそうな顔。
 どうやら、彼女が『世界と約束した15分』が経過(けいか)してしまったらしい。

 アポロは、かすれた声で、

「……すべてを包み込む光……できれば……あなた様の力に……なりたかった……」

 そんなことを言った。

 俺は、『胸ポケットから取り出したハンカチ』で口をぬぐってから、
 一度、呼吸をととのえて、

「……おいおい、なんだよ。まるで『もうそれは不可能』みたいな言い草だな」

「……私は……もう……」

「ナメんなよ、アポロ。俺は、絶対にお前を死なせない」

「……ぇ……」

「蝉原相手に、よく頑張ったな。お前はすごいよ」

 そこで、俺は、彼女の頭を、ソっとなでた。
 柔らかな髪質。
 こうしてみると、ただの女の子にしか見えない。

「蝉原に立ち向かったことだけじゃない。たった一人で、ずっと、ずっと、この世界を守ってきた。俺はお前を尊敬(そんけい)する。――そんなお前を……『必死になって、この世界を守ろうとしたお前』を見殺しにしたりはしない。そんなクソ以下のエンディングを俺は絶対に認めない。俺は、胸糞(むなくそ)が嫌いなんだ」


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