センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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103話 結局のところは感情論。


 103話 結局のところは感情論。

(――ああいう感情論を消していけば、確かに身軽になれる。けれど、それは『自由になる』という意味ではなく、ただ薄っぺらになるだけ。『豊かさ』と『深み』を失う。身軽になった分だけ、拳も軽くなる)

(……)

(他にも、一つ、あの親子を消すのに反対の理由がある)

(……いちいち、俺の反応を待つんじゃねぇ。言いたいことがあるなら、とっとと言えよ)

(いや、ダメじゃ。『聞きたい』と乞(こ)われなければ、これは言えん。これは感情論ではなく、礼儀・礼節・マナーの問題)

(……鬱陶しい)

 ナイアは、一度、タメ息をついてから、

(ソウル・フォースと、ゲン・フォースを消さない理由とはなんだ?)

 それを問われると、
 バンプティは、ニっと微笑んで、

(それは、私が、『栄えあるゼノリカの天上、九華十傑の第十席序列二位、バンプティ』だからじゃよ。この私の前で、『愛のある親子を殺す』ことなど、絶対に許さない)

(……結局、感情論じゃねぇか)

 と、ナイアは、再度、タメ息をついた。



 //ここで、一つ、『ソル』と『コスモゾーン』についての秘密を打ち明けておこうと思う。
 『ソル』の中には、『最後にすべてを喰らい尽くすプログラム』と『愛したものをなくしたくないという想い』の二つが混在する。
 ナイアは、前者に『属する一つ』であり、
 ソウル・フォースは、『後者が具現化した一つ』である。

 そして、コスモゾーンとは、
 『ソルが利用している管理サービス』みたいなもの。
 コスモゾーンはシステムでしかないので、
 本来であれば、感情を持たない。
 しかし、ソルが恐ろしく長い間利用してきたことにより、
 『九十九神化』して、高次のインテリジェンスをもつようになった。
 それは『想定外の不具合』であり、
 そして間違いなく『望外の奇跡』でもあった。

 九十九神化した結果、コスモゾーンも、『センエースの可能性』を愛するようになった。
 この奇跡的な進化により、『コスモゾーン』と『すべてを喰らい尽くすプログラム』との間に『対立』が起きるようになった。

 コスモゾーンは、ソルの管理が必要不可欠であり、
 ソルも、コスモゾーンというシステムの利用が必要不可欠。

 おたがいが、お互いを必要としていながら、
 意見がぶつかり合う時もあるという厄介な状態。

 お互いが絶対にひつようだからこそ、
 完全排除することもできない。
 結果、両者は、妥協しあいながら、
 どうにかこうにか、ラスボス・プロジェクトを進めている。

 その光景を、簡単に例えるとすれば、
 『意見が対立する夫婦の子育て』である。

 父親の方はスパルタ熱血英才教育を望み、
 母親の方は愛と情緒を豊かにしたいと願っている。

 父も母も、『子が自分を超えること』を望んでいる。
 しかし、どうするのがベストなのかは見えていない。

 無数の研究とリハーサルを繰り返して、
 必死になって、『自分たちが思い描く道』に導こうとしても、
 子供というのは、なかなか思った通りの道には進んでくれない。

 『これこそが完璧』だと思って創ったレールを、
 『いや、俺は、こっちに行きたい』とシカトされることも多い。

 だから、いつだって、悪戦苦闘。
 夫婦は対立、子も反発。
 そんな状況でも、
 どうにか、こうにか、『今日という日』までたどり着いた。

 レゾナンス世界線に辿り着いたセンの努力に対し、
 父も母も、心からの拍手と称賛を送った。

 だからこそ、余計に『ミスりたくない』という恐怖心が募る。
 だからこそ、余計に『なくしたくない』という感情論が爆発する。


 コスモゾーンとソルは、今後も対立していくだろう。
 ラスボス・プロジェクトが育つほどに、
 二人の間では確執(かくしつ)が大きくなっていく。

 だが、それは、悪いことばかりでもない。
 おかげで、未来はつながった。

 ソル単体では、決して、ここまでこられなかった。
 それは、歴史が証明している。
 コスモゾーンに変革が起きたおかげで、未来に可能性が残った。

 諸行無常の未来が変わるのか否か、
 そこのところの結論はまだ出ていないが、
 しかし、両者は『変わるはずだ』と信じて突き進む。


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