センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

97話 そして、センは、原初の世界に帰る。


 97話 そして、センは、原初の世界に帰る。

「捨てたければ、いつでも捨てろ。貴様が背負い続けるか、雑に捨てるか。これは、それだけの問題だ。今の私は、『貴様という親』のスネをかじるしか能のないヒキニート。家を追い出されたら死ぬ。それだけだ」


「……自分の命をタテにしたニート戦法……なんて卑劣な……」

 深いため息をついてから、
 センは、

「……大食漢の自宅警備員……そこだけ切り取ってみると、なんかサ〇ヤ人みたいだな……」

 などと、ファントムトークで自分を慰めていると、
 そこで、
 ゴゴゴっと、音をたてながら、
 でかい扉が、地面から生えてきた。

 強い既視感をおぼえた。
 それは、原初の禁域の扉に似ていた。
 『似ていた』というか、そのものだった。


「……これは……原初の世界に帰れってことか?」


「それ以外に、何か可能性が思いついたのであれば発表してみてくれ。否定するから」

「そんな無駄なラリーに興じるほどヒマじゃねぇよ。つぅか、もっと、素直な言葉で返事してくれない? その鬱陶しさ、マジでダルいんだけど」

「なら、貴様も、ファントムトークをやめたらどうだ? アレは、相当に不快だ」

「……俺も出来れば、やめたいんだけどねぇ。『どうしても治らないクセ』みたいなもんで、気付けば、無意識にファントムってんだよ」

「私も同じだ。自身の重さを変えることはできない」

「……厄介な話だ。自分一人の鬱陶しさだけでも、サバき切れずに悪戦苦闘しているってのに。こんな『くっそダルい重さ』まで抱えて……」

 ため息交じりに、
 一度、ファントムトークで自分を翻弄してから、
 スっと、まっすぐな目で世界を睨み、

「けど、全部背負うと決めてしまったしな……」

 『諦めることを諦めた男』の覚悟を受け止めたヨグは、
 センの中で、一度微笑んでから、


「では、そろそろ扉に向かって、私を掲げろ。そうすれば、原初の世界に帰れる」


「それも嘘だ、とか言わないだろうな」

「今回に関しては、嘘ではない。今後、嘘をつかないとは言わないがな」

「嘘つきで大食漢の自宅警備員……なんで、俺、こんなクソ不良債権を自ら抱えてんだ……我ながら意味がわからん」

 などとボヤくセンに、ヨグは、

「嘆いているヒマはないぞ、センエース。『冒険の書(仮免)』では、本当の未来は開けない。正式に、冒険者試験をクリアして、本物の冒険の書を手に入れろ」

「本物の冒険の書を手に入れたら、何が起こるんだ?」

「それは、自分の目で確かめろ」

「ヒントだけでも教えてくれよ」

「不可能だ。なぜなら、私は、何も知らないからな」

「このsiri、本当にクソの役にもたたんな……」

 溜息をつきつつ、センは、
 扉に向かって大剣を掲げた。
 すると、


 ――プライマルコスモゾーンレリックの獲得を確認。
  『禁域へのゲート』を開きます――


 声が響くと、
 扉がカっと光った。
 感覚器官のすべてにしみわたるような深み。

 おそろしく強い『かがやき』だった。

 その光は次第に大きくなっていって、
 センエースの視界を覆いつくす。


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