センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

85話 うそつき。


 85話 うそつき。

「……お前は、また、アレか? お前の幻影的なやつか? それとも、またシャドー的な感じか? あるいは……自分を壊させることで発動するアリア・ギアス? どれだ?」

 そんな『センの疑念』に対して、
 ヨグは、小バカにするように笑って、

「どれでもない。これが私だ」

「……どういう……」

「永(なが)きにわたって、真・第一アルファに身をささげ続けた……あまりにも、力を注ぎ過ぎた……その結果、私の力はからっぽになってしまった……」

「……」

「もはや、この世界を支えるだけの力もない……じき、この真・第一アルファは崩壊・消滅する」

「なにを……言って……」

「管理者のマネごとをして、世界の器そのものになってみて……気づいたことは一つ……これは……しんどい……」

 天を仰いで、タメ息をつくヨグ。

 心底、疲れ果てた顔で、

「たった一つの世界を支えるだけで、このしんどさ……これは、あまりにも酷い仕事だ……」

 本音を口にしてから、
 ボソっと、


「……世界全ての器を果たしている『あいつ』には、ほとほと頭が下がる」


「……」

 センが、ヨグの言葉を咀嚼している間に、
 ヨグは続けて、

「センエース……もうすぐ、私の『破壊衝動』が目覚める。……エネルギーを補充するために……空腹を満たすために、自我の大半を失って、世界を喰らい尽くす獣になる」

「……」

「感じる……私が私でなくなっていく……これは……怖いな……」

 ずっと『脆い言葉』を紡ぎ続けるヨグ。
 すさまじい力を持つ化け物のはずなのに、
 シルエットだけで見てみれば、
 おびえている子供にしか見えない。

 『壊れたモンスターになる』という恐怖は筆舌に尽くしがたい。



「センエース、本音を言おう。……私は……『自分がどうしたいのか』すら、本当は、分からないんだ。……何がしたくて『この世界を創った』のか、正直、自分でも分からない……」



 手探りで言葉を探しながら、

「いや、本当は、なんとなくわかっている……ずっと見てきたから……苦しんでいる『太陽』をずっと見てきたから……だから、知りたくなったんだろう……『太陽』の痛みを、この身で感じてみたかったのだろう……ソレを知らなければ、前に進めないと思った……無意味なエゴだ……けれど、私にとっては、どうしても必要なエゴだったように思う」

 そこで、ヨグは、一筋の涙を流して、

「この世界は終わる……私が喰らい尽くして終わる……大事に育ててきた全てが……私自身の手によって蹂躙される……」

 悲痛を口にする。
 苦悩を目で語る。

「方法がない。世界の終焉は止められない。センエース、お前でも、この絶望だけは超えられない。この世界に『本物の解決策』など存在しない」

 そこまで言葉を紡ぐと、
 ヨグは、徹底的に真摯な目で、
 貫くように、センの瞳を見つめて、


「センエース……どうか、私を……」


 血を吐くように、





「――嘘つきにしてくれ――」





 そう言ったところで、
 ヨグは、

「うぶっ……ごはぁっ!」

 噴水のように、黒い血を吐き出した。
 ドプドプと、湧き出て止まらない。

 何が起こっているか、センにはサッパリ分からない。
 ただ、

「……おいおい……どんだけ膨らんでいくんだよ……」

 ヨグが、凶悪になっていくことだけは、見ればわかった。

 当たり前の恐怖を覚えた。
 センは思う。

(俺は……これだけの領域に到って、まだ、『目の前の敵』に対して、普通にビビり散らかすのかよ……いつまでたっても、『無敵の神』にはなりきれねぇ……俺ってやつは、まったくもって、ヒューマンだなぁ……)



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