センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
55話 余計な勇気。
55話 余計な勇気。
「……『絶望の前に立つ資格を持たない者』は、『心を摘まれてしまった者だけ』ですよ。ここまでに積み重ねてきた努力が足りなかったことを自覚するのは結構。しかし、それを言い訳にして折れるようなバカは、敵よりも先に、ボクが殺します」
ゾメガと平熱マン。
この二人も、
実のところ、心を摘まれかけている。
どうやっても『100万体のウムル』を殺しきれるとは思えない。
両者とも、頭がいいから。
ちゃんと計算ができるから。
だから、わかってしまう。
無理だということ。
最初から詰んでいるということ。
――けれど、それを『理解しているかどうか』など『どうでもいい』ということも『センエースを知っている』から理解できている。
大戦の時も、
バグの時も、
愚神の時も、
ちゃんと、明確に、キッチリと、最初から詰んでいた。
今とほとんど変わらないレベルで終わっていた。
けど、センエースだけは諦めなかった。
全員が諦めて、心折れて、
『終焉』にのみ『魂の救い』を求めて、
けれど、センエースだけはずっと、勇気を叫び続けていた。
――ゾメガは、奥歯をかみしめて、
「もう頑張らなくていい。ぬしらは十分がんばった。だから、もう頑張らなくていい」
続けて、平熱マンが、
「ただし、うつむくな。前を見ることをやめるな。見届けなさい。ボクたちが、まだここに立っているということ。それだけは見届けなさい。君たちの先頭には、必ずボクらがいる」
弱い心を殺して虚勢をはる。
からっぽのウソで世界を欺く。
ゾメガが、
「安心せぇ。ここにいるバカ二人は、絶対に折れない。必ず、ぬしらの前に道をつくってやる」
「ボクらは、最後の最後まで、君たちの道標で在り続けると誓う」
「だから……もう、他は何もしなくてもよいから……前を見る事だけはやめるな」
「目をそらすな。絶対に」
「余の背中から、」
「ボクの背中から、」
「「絶対に目を離すんじゃねぇえええ!!」」
叫んだ勇気の分だけ器ができる。
単なる虚勢であっても、
叫び続けることで形になっていく。
勝ち筋など、いまだ見えない。
100万体のウムルを殺す算段などついていない。
数値的な意味で言えば、事態は何も好転していない。
――けれど、
(……ちっ……顔つきが変わった……余計な勇気を魅せやがって……)
31号は、表情に出さないよう注意しつつ、
心の中で舌打ちをした。
互いの『戦力差の数値的』には何も変わっていないが、
しかし、ゼノリカの……特に『天下の意識』が大きく変化した。
天下の面々は、ゾメガと平熱マンの覚悟に触れることで、
徐々に、徐々に、センエースを理解しはじめる。
先ほどの二人のセリフが、
『聖典に記されている、異世界大戦の時のセンエースの言葉である』、
ということが理解できない者はここに一人もいない。
本当の絶望を前にして、
それでも、本物の勇気を叫びながら、
自分達の前に立つ二人の王の背中が、
『センエースを知らない天下』の心にしみわたる。
(ああ、これは無理だな……50号を出す前に殺しきるのは不可能……)
ウムルは心底ダルそうに天を仰いだ。
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