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44話 栄えあるゼノリカの天上、三至天帝が一人、ゾメガ・オルゴレアム。


 44話 栄えあるゼノリカの天上、三至天帝が一人、ゾメガ・オルゴレアム。

 ――最初に出会った時は、センの方がチャレンジャーだった。
 『絶対的王である自分(ゾメガ)』の前に立つ、『そこそこ強い挑戦者』に過ぎなかった。
 けれど、気付いた時には、『同格の力を持つライバル』になっていて、
 うかうかしていたら、あっという間に『置き去り』にされて、
 ついには、『見上げるだけの存在』になった命の王。

 最初の方は、葛藤もあった。
 『せめてライバルであろう』と、必死に『もがいた時期』もあった。
 しかし、諦めた。
 『おこがましい』と思ったから。
 センエースは『別格』だった。

 知れば知るほどに、
 『センエースの異質さ』を思い知った。
 その『庇護下』におさまることの『心地よさ』を知った。
 ……知りすぎてしまった。

 屈服して、服従して、
 配下となり、弟子となり、
 それ以降は、ずっと、幸福だった。
 おぼれるほど幸せだったのだ。

 正式に『センの下』になったことで、
 『王として頂点に立っていた時』などよりも、
 遥かに輝かしい毎日の中で過ごすことができた。

 ゾメガは愛されていた。
 センはゾメガを大事にしていた。
 センにとって、ゾメガは最初のラスボス。
 今となってはぶっちぎったが、
 かつてはセンにとって『最大の目標だった男』がゾメガ・オルゴレアム。
 その事実が、ゾメガの誇り。

 悪い言い方をすれば、ゾメガはセンの『踏み台』だが、
 極限までポジティブな言い方をすれば、
 ゾメガは、センの『父親』だった。
 超えるべき目標。
 最も大事なハードル。
 『ソコを乗り越えられるかどうか』が命の分岐点。

 その極めて重要な役目を、ゾメガは『全(まっと)うできた』と思っていた。

 だからだろう。
 どこかで、枯(か)れていた。
 『もうお役目は十分に果たしつくした』という達成感と満足感が、
 ゾメガの未来を封じていた。

 ゾメガ・オルゴレアムは異次元の天才である。
 圧倒的かつ破格の才能があった。
 責任感から、常軌を逸した努力もしていた。
 だから、三至というポジションから落ちることはなかった。
 しかし、三至の中では明らかに劣っていた。
 別にそれでもいいという想いがどこかにあったから。

 ――だけど、もうない。
 そんな贅肉は、ソウルゲートの中に置いてきた。

「別に、余が何もしなくとも、師さえいれば、どうとでもなる……それが、余の本音だった……」

 己の『醜い本音』を世界に刻み込む。
 本気で向き合うと覚悟を決めたから。
 だから、無様を晒して自分を整える。

「本当に、偽り抜きの本気で……『余が何かをする必要など皆無だ』と思っていた……『何かをしようとするだけ無駄だ』と諦観(ていかん)していた……余など『平時を円滑に回すだけの、少しだけ優秀な歯車であればいい』と……どこかで……そう思っておった……」

 全部、本音。
 優れた王の庇護下で、ぬくぬくと、幸福に包まれていた。
 それが悪いわけではない。
 幸福になることは罪ではない。
 けれど、それでは前に進めない。

 今は違う。
 今のゾメガは、
 前に進みたいと、心から願っている。

「余は、栄えあるゼノリカの天上、三至天帝が一人、ゾメガ・オルゴレアム」

 願うだけでは話にならない。
 そんなことは知っている。

 希望にすがりつくだけではただの怠慢。

 だから、積んできた。
 100万年。
 本当はもっと積みたかったけれど、
 次のステージに進むだけなら十分なほど積んできた。


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