センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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33話 センエースを知らないという罪。


 33話 センエースを知らないという罪。

 ウムルの言葉を聞いて、カンツは、一人の青年を思い出す。
 かつて、一緒に仕事をした愚連のA級武士。
 ネス(NES)という名前の、目つきが悪いへちゃむくれ。
 存在値は大したことなかったが、根性の入り方が異常だったので、よく覚えている。

(まさか……)

 などと頭の中で思っていると、
 ウムルが続けて、

「命の壁を前にして、もがき、あがき、苦しみながらも、それでも、あいつは、世界のために奔走していた。だから、お前らは、のうのうと生きてられたんだ」

「……本当に? ……いや……だが……そんなこと……」

 『ウムルの言葉』を『飲み込む』のが難しい。

 『言葉の意味を理解するだけ』なら簡単なのだが、
 『相手の想い』を正しく理解するのは本当に難しい。

 カンツは、あらためて、『目の前にいる敵の大きさ』を理解しようと頭を動かした。
 『恐怖で体が動かない』ということはないが、
 実際問題、グチャグチャにされすぎていて体が、思うように動かない。

 ウムルという名のこの強敵は、あまりにも強大。
 折れるわけにはいかないから、必死になって立ち向かっているが、
 できる事なら尻尾をまいて逃げ出したというのが本音。

 こんな地獄を処理することを『唯一の責務』と押し付けられた者の苦悩。
 その責務を果たすだけでも大変なのに、
 それ以外の面倒な仕事も、実は必死にこなしていた。

 それがセンエース。
 命の王。

 ――そんな話を聞かされても、
 飲み込むのが難しい。
 そんな、むちゃくちゃな存在が、本当にいるのかと、
 どうしても、常識に照らし合わせて懐疑的になってしまう。

 自分なら出来るだろうか、と、そういう視点で考える。

 カンツならば、やろうと思えばできるかもしれない。
 ただ、

(どれだけ……)

 それが、どれだけ大変な仕事なのか、想像するのは難しくない。

 カンツは、思わず、奥歯をかみしめてしまった。
 もし、ウムルの言葉が真実であったならば、
 そう考えると、そんな場合ではないのに、
 つい、今までの自分を恥じてしまう。
 センエースに対する敬意が足りなかったことを、
 心の底から後悔する。


 ――そんなカンツに、
 ウムルは言う。

「センエースの献身を理解しようとすらしなかったカスが、誰よりもセンエースを知っている私に勝てるわけがないのだよ」

 そう言いながら、
 ウムルは、カンツの腹部に手刀をぶち込んだ。

「ごふっ……」

 盛大に吐血するカンツ。
 ウムルは、そこで手を止めず、
 カンツの中身をぐちゃぐちゃにしていく。

「ぐぅうう、ぎぃいい!」

「貴様の根性だけは認めてやるよ、カンツ・ソーヨーシ。普通ならとっくの昔に気絶しているところ。貴様の根性と覚悟は紛れもなく本物。けど、やはり、大事なものが足りていない。貴様はセンエースを知らない。だから、ぬるい。結局」

 そう言いながら、ウムルは、カンツを投げ捨てる。

 そこで、ウムルは、全体を見渡して、

「あとは、ジャミを削り切れば終わりかな。『アンリミテッド・ヴェホマ・ワークス』は鬱陶しいが……ぶっちゃけ、『ギャグ漫画補正』の劣化版にすぎない。カンツが静かになれば、ゼノリカはもう終わ……ん?」

 そこで、ウムルは足元に目をやった。
 自分の足首を、カンツのボロボロの手が掴んでいた。

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