センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
24話 アモンの誇り。
24話 アモンの誇り。
「な……なんで……こんなこと……」
「おいおい、無粋だな、アモン。理由なんて一つしかないだろう。私が悪者だからだよ。最高峰かつ純然たる悪だから、正義の化身であるゼノリカを叩き潰す。当たり前の話」
「……う……うぅ……」
深い絶望の底で、
アモンの中心が叫んでいた。
比較的『ゼノリカに所属している期間』は『短い方』だが、
しかし、彼も、間違いなくゼノリカに所属している者。
だから、心には刻まれている。
センエースを信じたことは一度もないが、
センエースの覚悟は灯っている。
だから、
(こいつは殺さないといけない……なにがなんでも……ほんのわずかでもいいから……ダメージを……っ)
『間違いなく死ぬ』と理解したと同時、
『逃亡』ではなく『献身』が先に立った。
そのことを、アモンは誇りに思う。
この瞬間に『自分は間違いなくゼノリカの一員である』と強く思えた。
グっと拳を握りしめる。
全身が痛むけれど、そんなことはどうでもよかった。
「滅殺・豪魔拳ランク15!!!」
全身全霊の一撃。
とにかく、すべての力を込めてぶん殴る。
勝てるとは思っていない。
彼我(ひが)の力量差はすでに理解できている。
ほんの少しでもダメージを与えて、
後続につなぎ、
ゼノリカの全滅を防ぎたい。
その想いだけで放った一撃。
その一撃を受けて、ウムルは、
「いいねぇ!」
ニカっと快活な笑顔を向けて、
「今の一撃はよかったぞ、アモン――ラピッド・ヘルファイアよ。お前には確かに才能がある。資質も十分。正義の化身になれる器」
そう言ってから、
ウムルは、アモンの片目をグシャリとつぶす。
「ぎゃああああっ!」
悲鳴をあげるアモンに、
「けど、残念。ここで全部終わる。お前の未来は死ぬ。全部死ぬ」
「ううう……ぐぅう……ぃいい、ご、豪魔拳ランク15!!」
絶望の底で、
それでも、アモンは、拳を叩き込む。
まったく相手になっていない。
しかし、それでも握りしめる拳。
歯をむき出しにして、
命が終わるギリギリまでもがこうとしている。
――そんなアモンの様子を目の当たりにして、
『遅れて登場した彼女』は、
「……ほんの少し前まで、『調整された絶望』すら超えられなかった無能が……ちょっと見ない間に、随分と成長したじゃない。心の底から褒めてあげるわ」
アモンの勇気に称賛を贈った。
現れたのは、栄えあるゼノリカの天上、九華十傑の第十席序列三位。
百済の闇人形の中でも特に深い黒を纏いし高潔なる闇の薔薇。
エキドナール・ドナ。
「この私ですら身がすくむ相手……そんな化け物を相手に、見事時間稼ぎの役目を務め切ったあなたには心から敬意を表する」
そんなドナの隣には、
ムキムキが過ぎるダンディズムの結晶。
「カンツほどの超人を倒したほどの化け物……よくも、まあ、そんな相手に立ち向かえたものだ。ゼノリカに属する者は、子供も老人も関係なく、みな、一律に頭がおかしいということか」
栄えあるゼノリカの天上、九華十傑の第十席序列一位。
ジャミの実父であり、天上の戦闘職の中でも最高格の実力者。
アクバート・ニジック・J・ヤクー。
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