センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

24話 アモンの誇り。


 24話 アモンの誇り。

「な……なんで……こんなこと……」

「おいおい、無粋だな、アモン。理由なんて一つしかないだろう。私が悪者だからだよ。最高峰かつ純然たる悪だから、正義の化身であるゼノリカを叩き潰す。当たり前の話」

「……う……うぅ……」

 深い絶望の底で、
 アモンの中心が叫んでいた。

 比較的『ゼノリカに所属している期間』は『短い方』だが、
 しかし、彼も、間違いなくゼノリカに所属している者。

 だから、心には刻まれている。
 センエースを信じたことは一度もないが、
 センエースの覚悟は灯っている。

 だから、

(こいつは殺さないといけない……なにがなんでも……ほんのわずかでもいいから……ダメージを……っ)

 『間違いなく死ぬ』と理解したと同時、
 『逃亡』ではなく『献身』が先に立った。
 そのことを、アモンは誇りに思う。

 この瞬間に『自分は間違いなくゼノリカの一員である』と強く思えた。
 グっと拳を握りしめる。
 全身が痛むけれど、そんなことはどうでもよかった。


「滅殺・豪魔拳ランク15!!!」


 全身全霊の一撃。
 とにかく、すべての力を込めてぶん殴る。
 勝てるとは思っていない。
 彼我(ひが)の力量差はすでに理解できている。

 ほんの少しでもダメージを与えて、
 後続につなぎ、
 ゼノリカの全滅を防ぎたい。

 その想いだけで放った一撃。
 その一撃を受けて、ウムルは、

「いいねぇ!」

 ニカっと快活な笑顔を向けて、

「今の一撃はよかったぞ、アモン――ラピッド・ヘルファイアよ。お前には確かに才能がある。資質も十分。正義の化身になれる器」

 そう言ってから、
 ウムルは、アモンの片目をグシャリとつぶす。

「ぎゃああああっ!」

 悲鳴をあげるアモンに、

「けど、残念。ここで全部終わる。お前の未来は死ぬ。全部死ぬ」

「ううう……ぐぅう……ぃいい、ご、豪魔拳ランク15!!」

 絶望の底で、
 それでも、アモンは、拳を叩き込む。

 まったく相手になっていない。
 しかし、それでも握りしめる拳。

 歯をむき出しにして、
 命が終わるギリギリまでもがこうとしている。


 ――そんなアモンの様子を目の当たりにして、
 『遅れて登場した彼女』は、





「……ほんの少し前まで、『調整された絶望』すら超えられなかった無能が……ちょっと見ない間に、随分と成長したじゃない。心の底から褒めてあげるわ」





 アモンの勇気に称賛を贈った。

 現れたのは、栄えあるゼノリカの天上、九華十傑の第十席序列三位。
 百済の闇人形の中でも特に深い黒を纏いし高潔なる闇の薔薇。
 エキドナール・ドナ。

「この私ですら身がすくむ相手……そんな化け物を相手に、見事時間稼ぎの役目を務め切ったあなたには心から敬意を表する」

 そんなドナの隣には、
 ムキムキが過ぎるダンディズムの結晶。

「カンツほどの超人を倒したほどの化け物……よくも、まあ、そんな相手に立ち向かえたものだ。ゼノリカに属する者は、子供も老人も関係なく、みな、一律に頭がおかしいということか」

 栄えあるゼノリカの天上、九華十傑の第十席序列一位。
 ジャミの実父であり、天上の戦闘職の中でも最高格の実力者。
 アクバート・ニジック・J・ヤクー。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品