センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

70話 めでたし、めでたし。


 70話 めでたし、めでたし。

 腸をグチャグチャにされて、
 心臓も貫かれて、
 臓器の全部が木っ端みじんになって、
 ついには、

 ――残ったのが、首から上だけになった。

 それでも、センは、

「おびえる時間だぜ、クトゥルフ・オメガバスティオンさんよぉ! この状態になっても、まだ、俺の殺気は、更年期の血圧みたいに、とどまるコトを忘れて、ひたすらグングン上昇中だぜ?! すげぇだろ! ラリってんだろ?! けど、ここはまだ旅の途中! 俺はまだ壊れる! まだ、折れてやらねぇ! そのきざしすら微塵もない!!」

 センは、魔力とオーラだけで自分を推動させる。
 突撃の途中で、図虚空を召喚して口にくわえると、

(――龍牙一閃――)

 まっすぐに、
 オメガの喉元めがけ、ナイフをきらめかせた。

 当然、そんな一撃がオメガに届くはずもなく、

「センエース。お前の殺気が、いつまでも上昇し続けることはよくわかった。お前の心は絶対に折れない。よくわかったよ」

 そう言いながら、
 オメガは、センの頭を掴んで、

「けど、それだけじゃねぇか。別に強くなっているわけでもなんでもない。ただ、俺を殺そうと『むき出しの気持ち』を前面に押し出しているだけ。確かに気持ち悪いが、今のところ、それ以外の感想はないな」

 そう言い捨てて、
 オメガは、センの頭を地面にたたきつけようとした。

 そのムーブを、センは予見していた。
 最善手を求め続けたセンの演算が、
 未来視に少しだけ近づいていた。
 田中トウシほど完璧かつスマートに、
 一直線の演算をすることは流石に不可能。

 しかし、鉄火場でのセンの頭は、
 田中トウシでも見えない部分を見通していく。
 田中トウシならば『見る必要がない』と合理的に切り捨てていく部分すら、センは愚直に演算しつづける。

 その愚かさが、世界に切り込みを入れる。
 自分の生首を囮にするというキチ○イの一手。

 オメガが『センの頭を地面にたたきつける』ということに集中した、その瞬間だけを狙いすまして、



「――龍閃群――」



 ひそかに空へと設置していた剣翼を暴走させる。
 イメージとしては、幻爆の剣翼。

 『田中トウシが解析した結果』の一部を、
 センは『自分の中』に刻んでいた。

 センエースを苦しめ続けた絶望を、
 センエースは、自分のモノにすることで克服する。
 気分的にはロッ○マン。
 ボスの必殺技を会得して強くなる!

 ――空から降り注ぐ無数の剣翼。
 厨二が暴走した漆黒の剣。
 聖なる死神と、悪夢の熾天使、
 両者の質量を込めた剣が、オメガの全身を貫く。

「……っ……」

 回避は許さない。
 丹念に積んできたセンの一手。

 ようやく一矢報いた。

 そう思ったセンの視界に、
 オメガの黒い笑顔がうつる。
 剣の雨にうたれて吐血しながら、
 しかし、


「――見事だったぜ、センエース」


 いっさい動じることなく、そのまま、オメガは、
 『センの頭を、地面にたたきつける』という行動を完遂してみせた。

 グシャリと、あっさり、センの頭部は破裂した。

 それでも、なお降り注ぐ剣の雨を、
 オメガは、

「舞い踊れ、幻爆の剣翼」

 自身が展開させた剣翼で相殺してみせた。

 センの一手は、オメガに、大量の血を流させた。
 大きなダメージを与えた。
 それは間違いなかった。

 しかし、結局のところ、センは、
 オメガを殺すことはできなかった。
 一矢報いることはできたが、
 しかし、最終的には、
 オメガを殺すことはできず、
 『そのまま死んでしまっただけでした』とさ。

 めでたし、めでたし。

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