センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

62話 命がけのテンプレ。


 62話 命がけのテンプレ。

「損得を言い出したら、誰かに感情を向けるということが、そもそも、とんでもなく損な行為だと、俺は思っている」

 自分の事だけ考えていれば、基本的には得ができる。
 ――けど、その生き方だと胸を張れねぇ。
 中確率で小金持ちにはなれるかもしれないが、
 間違いなく、『豊か』にはなれねぇ。

「俺は、そこそこプライドが高いんでね。どうせ死ぬなら、自分に対する遺恨はゼロで逝きたい。『精一杯頑張った』と……『自分が望む通りに命を全うした』と、そう思いながら死にたい」

「……ま、好きにすればいいけどね。『ニャルラトホテプのアリア・ギアス』の重みを、ちゃんと理解しているのであれば、こっちとしては他に何も言う気はない」

 そう言うと、そのままニャルはその場から消えた。
 言いたいことだけを喋り散らかして、
 場をグッチャグチャにしてから帰っていった。

 その『イカれた奔放さ』を面白く感じて、
 センは普通に笑ってしまった。

 そんなセンに、
 それまで空気を読んで黙っていてくれたオメガが、

「長話は終わったのか?」

 そう声をかけてきた。
 センは、オメガに視線を向けて、

「悪かったな、時間をとって。けど、もう、あいつとしゃべることは何もない。俺の中で、あいつの役目は終わった。……俺自身も、俺にとっては、もう役目を終えたみたいなもの」

 そう言いながら、
 センは、自分に没頭する。


「これが最後の出撃だ」


 と、感慨深く、
 言葉を並べてから、
 センは、魔力とオーラを全開にしていく。

 テンプレという名の『概念の鎧』を身に纏う。
 それは、ギャグでも冗談でもない。
 本気の虚勢。
 命がけの伊達。
 血肉化されたハッタリ。

 後先を一切考えない全力。
 ドクドクと強くまたたく。
 赤く、黒く、強く、輝く。

「クトゥルフ・オメガバスティオン。お前と一緒に消えてやるよ。俺とお前だけが、綺麗に消えて……それで、全部を、終わらせる……」

「はっ、てめぇだけ消えてろ」

 そう言い捨てると同時、
 オメガは、センの目の前まで瞬間移動。
 わざわざ死角に潜んだりはしない。
 まっすぐいってぶっ飛ばす。
 右ストレートでぶっとばす。





「センエース! てめぇに、トコが救えるか!」





 踏み込んできた拳がセンの顔面を捉えた。
 メリメリとめり込んで脳を揺さぶる。
 重たい一撃だった。

「げはっ……っ」

 鼻血が噴き出る。
 視界がグラつく。

 けれど、まだ舞える。
 そう認識できたと同時、
 センは強く奥歯をかみしめて、

「閃拳!」

 純粋な拳で応戦。
 そこから先は殴り合い。

 約束を交わしたわけでもないのに、
 まるでターン制のRPGみたいに、
 お互いが、一発ずつ殴り合う。

 重たい拳が互いの肉を削(そ)いでいく。
 これは、命ではなく心を摘む闘い。

「センエース。お前の命が終わっていくのを感じるぞ。お前も感じているだろう?」

「ああ。感じている。これから、俺は地獄に堕ちる」

「センエースよぉ! いいザマじゃないか! 散々、頑張ってきて、その結果が、無間地獄行き! ほんと、最高の人生じゃないか、なあ、センエースっ!」

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