センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

60話 ニャルのアリア・ギアス。

 
 60話 ニャルのアリア・ギアス。

「女にケツを拭いてもらっていながら、またすぐに、HPが赤ゲージへと元通り。みじめだな! 女が風俗で稼いできた金を奪ってパチンコにいくカスみたいだ」

「さすがに、そこまではひどくないと思うが……まあ、でも、このまま終わってしまった場合、シルエット的には変わらないのかもな」

 そう言いながら、センは奥歯をかみしめる。
 戦意はまったく失っていない。

 センの目は、まだまだ、まっすぐに、オメガを捉えて離さない。

「俺は無様だよ……ずっと、ずっと……」

 芯が熱くなっていく。
 氷のように冷たく、
 朝の森みたいに静かに、


「……けど、無様なままじゃ終われないから……覚悟を決める……」


「てめぇは、すでに、目一杯の覚悟を決めて、そこに立っているだろうが。もう、それ以上はない」

「ああ。俺だけの力じゃ、もう、無理だ。けど、あと一つだけ、俺には切り札がある。正直、切り札と呼んでいいか微妙なところだが……けど、未来を掴める可能性……」

 そう言いながら、
 センは、アイテムボックスに手を伸ばし、
 黒い多面体を取り出すと、

「黒く輝け、トラペゾヘドロン」

 いつもの呪文を唱えた。
 すると、

「呼ばれて、飛び出て、じゃじゃじゃん」

 などと、おどけながら、
 ニャルが登場する。

 ニャルは、ニタニタと笑みを浮かべたまま、
 センをチラ見して、

「……ボクの提案を受ける気になった、と解釈していいのかな?」

「……ああ。全部受け入れる。だから……俺の大事なものを……守ってくれ。頼む」

「オーケー。了解した。刻み込んであげるよ、君に。ニャルのアリア・ギアスを」

 そう言うと、
 センの左の頬に、刻印が刻まれた。
 蛇のような、龍のような。
 禍々しい顔面タトゥー。

「いやぁ、しかし……提案しておいてなんだけど、本当に受け入れるとは思っていなかったよ。君は本当に異常者だよ、センエース」

 ニャルのアリア・ギアス。
 その詳細は以下の通り。

 ・センエースだけが、永劫の地獄に落ちる。
 ・世界の記憶から、センエースの全てが削除される。
 ・K5の面々が『セン以外の、素晴らしい異性』と巡り合えるチャンスを得る。

 ――その代わり、世界を守れる。

「もしかして、永劫の地獄をナメているのかな? 本当につらいよ? 君が、これまで積んできた無限ループに匹敵するよ?」

「構わない」

「誰も君を思い出さない。誰も君の献身を知らない。誰も君を愛さない。それが、世界の記憶から削除されるという意味だよ?」

「分かっている」

「彼女たちも、当然、君を忘れる。世界を守るために命をささげてくれた君に操(みさお)をたてて、純潔を貫く、なんてことはしない。普通に、『適当な男』を見つけて、バンバン、セックスをする。君以外の男に股を開き、君以外の男に愛をささやく。それでも耐えられる?」

「耐えられるとは思っちゃいない。だから、想像しないようにしている」

「そんなに苦しい目にあってまで、なんで、受け入れたのかな? ぶっちゃけ、自分でも引くぐらい、最低な提案だと思っているのだけれど?」

「それでもいいと思えたから」

「……」

「それでもいい……全部受け入れる……どんなに苦しくてもいい。……それでもいいから……」

 センは、
 涙を流しながら、

「……生きていてほしい。……失いたくない。……幸せになってほしい。……それだけ」


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