センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

50話 底意地の悪いメタファー。


 50話 底意地の悪いメタファー。

 高いタワーの最上階を目指しているとはいえ、
 直で向かうので、そんなに時間はかからなかった。

 チーンと、音がして、センは、エレベーターを降りると、
 そのまま、最奥にある特別ルームへと足を運ぶ。

 管理人室の前まで歩くと、
 そこで気づく。

(錠がついていやがる……)

 この部屋に、カギはかかっていなかったのだが、
 現在、管理人室には、三つの南京錠がついていた。

「カギをもっていたら錠が発生するシステムか……なんというか、底意地の悪いメタファーを感じるねぇ」

 などと言いつつ、
 センは管理人室に入った。

 そこでは、
 慣れ親しんだ男が、
 いつもとは違い、行儀悪く、机に腰を掛けていた。

 そして、センと目があうと、

「よう」

 と、圧の強い声で、そう声をかけてくる。

 センは、ほんの一瞬だけ、気圧されかけたが、
 すぐに、自分の丹田に力を込めて踏ん張り、

「こんにちは」

 と、慇懃(いんぎん)に挨拶を届ける。
 そんなセンに、管理人は、

「センエース。一つ、なぞなぞを出す。答えろ」

「……いいすよ、どうぞ」



「俺を殺せるか?」



「それは、なぞなぞじゃなくね?」

 と、直球の言葉を置いてから、
 しかし、センは、特に問題なさそうに、
 ゆったりと武を構え、


「――いくぞ、クトゥルフ・オメガバスティオン。殺してやる」


 そう宣言した直後、
 センは駆け抜ける。
 時空に飛び込まず、
 目の前の現実に自分を刻み込む。

 深い質量を維持して、
 握りしめた拳を、
 迷いなく、
 管理人にぶち込んでいく。

「閃拳っっ!!」

 莫大な火力。
 低位のアウターゴッドなら一撃で吹っ飛ぶ丁寧な一撃。

 その拳を、管理人は、その身で、シッカリと受け止めた。

「いいねぇ」

 そう言うと、お返しとばかりに、

「うらぁああっ!」

 気合いの入った握りこぶしで、
 センの腹部に鋭角なフックを叩き込む。

「ぶへぇっ!」

「どうだ、センエース。俺の拳は重いか?」

「……ああ……めちゃくちゃ、重てぇよ……なんだ、この重さ……どうなってんだ……」

 血反吐をはきながら、センは続けて、

「俺、めちゃくちゃ地獄を積んできたんだぜ……これ以上ないってくらい……なのに、お前……重さで言えば、俺の拳を超えてねぇ?」

「別に超えちゃいないさ。隣の芝生は青く見えるだけ。俺も相当積んできた自負があるが、お前には敵わねぇ。お前は異常だ。お前と比べれば、俺なんざ、所詮は、ただただ醜い無様をさらし続けただけのヘタレ。最高にカッコいいヒーローであるお前とはスペックに差がありすぎる」

「その嫌味、ガチンコで不快だねぇ。『醜い無様』なら、俺もゲロ吐くほどに晒してきた。俺にカッコいい要素は微塵もねぇ。誰よりもキモく、みっともなく、泥の中を這いずり回ってきた! そんだけぇえええ!」

 言葉を並べ合ってから、
 両者は、互いに拳をぶちこんでいく。
 お行儀のいい戦闘ではなく、
 まるで確認作業のように、
 拳に人生を注ぎ込み、
 互いの体にぶつけあう。

 両者とも、当たり前のようにボロボロになって、
 血を吐いて、骨が軋んで、肉が裂けて、
 そうやって、会話を続ける。
 こういう会話しか出来ない不器用な二人。

 似ているようで、
 しかし、実は、まったく似ていない。

「はぁ……はぁ……センエース……大きくなったなぁ……」

「はぁ……はぁ……親戚のオッサンみたいなこと言うじゃねぇか……」


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