センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
41話 なんで、そこまで。
41話 なんで、そこまで。
吐き出すように、
痛みを口にしていると、
涙があふれてきた。
言葉と心が連動して、
情動がパンパンになって、
「くそ……くそ……くそくそくそ……なんで、俺がこんな目に……」
耐えられなくなって決壊。
みっともなくボロボロと涙を流しうずくまるセンに、
メナは、
「そんな脆さで……よく、神話生物の相手が出来ていたな」
呆れたようにそう言い捨てる。
「やはり、神話生物など、携帯ドラゴンさえあれば、簡単に駆除できる、ちょっとした害獣でしかないのか? しかし、だとしたら、なぜ、あの子たちは、こんなやつを、それほどまで重要視する……なぜ、こんな無様なカスの横暴を許す……」
そんな疑問符を口にしたところで、
「べつに、許しているわけじゃないにゃ」
いつのまにか、メナの背後に立っていた茶柱が、
いつもの、呑気な声と口調で、
「我慢せざるをえない理由がある……それだけだにゃ」
そう言うと、
茶柱は、ほとんどノーモーションで、
――パァアアンッッ!
と、メナの頬に、強烈な張り手をお見舞いした。
「……っ」
一瞬、理解が追い付かなかった。
頬がジンジンして、首にも痛みを感じて、
そこで、ようやく、
「……ツミカ……なぜ、私を殴った?」
怒りを見せるのではなく、しかりつける側の顔で、
メナは、茶柱をにらみつける。
そんなメナに、茶柱は、
「腹が立ったからだにゃ」
サラっと、そう答えると、
謎のステップで、
メナの横をすりぬけて、
センの目の前までくると、
「愚かだにゃぁ」
センを見下ろして、そうつぶやく。
その声音には、色々な含みが見られた。
センは、
「茶柱ぁ! あのバカ女を、もっと、苛烈にどつきまわせ! あのクソは、世界一の王である俺様の腕を折りやがった! 最上位不敬罪だ! 許すまじ!」
「自分でやったらいいんじゃないかにゃぁ? その気になれば、秒で殺せるはずだにゃ」
「うるさい! とにかく、ボコボコにしろ!」
「わかったにゃ!」
元気よく返事をすると、
茶柱は、センの両頬に、高速の往復ビンタをぶちこんでいく。
「痛いわぁ! なにしとんじゃい!」
「ボコボコにしろって言われたから、仰せのままに、ボコボコにさせてもらったのにゃ」
「俺じゃねぇ! あの女をボコボコにしろと言ったんだ!」
「ほんとうに?」
「あぁ?!」
「――本当は?」
頑なな質問を透けて、
「……」
言葉が詰まる。
そんなセンに、茶柱は、
もう一度、シッカリとしたビンタを、センの頬にいれる。
いい音が鳴って、
ジンジンと響く。
「わざわざ、腕まで折られてやって、ツミカさんにも殴らせて……とんだマゾ野郎だにゃ」
「……」
「誰もそんなこと、望んでないにゃ」
もう一度、ビンタをする。
いい音がなる。
殴られていると実感できる音。
「なにもかもが中途半端な『出来の悪いヒール』っぷり。時々にじみ出ている罪悪感……そんなもん出すくらいなら、最初から何もしなければいいのにゃ」
茶柱は、またセンにビンタをいれる。
乾いた音だけが世界に刻まれる。
「……あんた、なんで、そこまで出来るの?」
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