センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

34話 不倶戴天(ふぐたいてん)の風刺。


 34話 不倶戴天(ふぐたいてん)の風刺。

 オメガタワーに到着し、
 いつも通り、管理人に会いに行ったセン。

 サラっと、いつもの、『線がどうこう』『円がどうこう』という、なぞなぞ&禅問答を終わらせて、帰ろうとしたところで、

「――大事な人に嫌われたら、君はどう思う?」

 などと、質問をしてきたので、
 センは、一瞬、怪訝な顔をしてみせた。

(……こんなことを言ってきたのは、これまでのループの中ではじめてだな……)

 管理人のセリフは、いつも、ほとんど同じ。
 ほんのちょっと言い回しが変わったり、タイミングが変わったりすることはあったが、基本的に、流れと中身は同じだった。

(今回に限って逸脱してきた……そこにある理由は……)

 などと、センは、管理人の質問ではなく、
 『流れが変わったこと』に対して頭をつかう。

 そんなセンに、
 管理人は、まっすぐな視線を向けて、


「大事な質問だ。ちゃんと考えなさい。センエース」


 と、まるで直属の上司のように、
 そんな言葉を投げかけてきた。
 上位者としての態度ではなく、
 経験者としての態度でもって。

「……」

 あまりにも真剣な瞳だったので、
 センも、つい、まっすぐな目になってしまう。

 空気がチャラけている時は、
 とことん、ふにゃふにゃしている男だが、
 相手が本気で対峙してきた時は、
 それ以上のガチンコで返していくのがセンの流儀。

 管理人は、空気を整理するように、

「もう一度聞く。大事な人に嫌われたら、君はどう思う? 『大事な人に嫌われた時、君はどうするか』という質問と捉えてくれてもかまわない」

 その問いに対し、センは、二秒ほど間を置いて、

「……別にどうもしない」

 真摯に、言葉を選びながら、

「必要なタスクをこなしていくだけだ。そうやって、俺は、ずっと生きてきた。これからも、そうやって生きていく」

「その生き方は辛くないかい?」

「辛くない生き方なんてあるのか? なにをどうすれば苦しまない生き方になる? 俺は、なんの悩みもなく人生を謳歌しているやつってのを、これまでの人生で、一人として見たことがないんだが」

「確かに、たいていの人間は、苦しみながら生きているな……なんで、みんな、苦しみながら、それでも、生きていこうとするんだろうな……」

「知らん。悟りを開く気はないから。昔のエロい人が、『釈迦といういたずら者が世にいでて、多くの人を迷わせるかな』という名言を残したが、あんたの質問には、その名言をたたきつけたいね」

 命の意味など考えているほどヒマじゃない。
 賢(さか)しらなアイロニーだけが世界を翻弄している。
 バカバカしすぎて、ファントムトークを使うことすらはばかられる。

「命の理不尽に対し、お行儀のいい理由をつけようとあがいたところで、余計に混乱するだけだ。俺は説法で取り繕ったりはしない。純粋な暴力を磨いてブチ殺す。魂の研鑽を積み重ねて圧殺する。俺を苦しめる不条理の全部を……意地と努力で皆殺しにしてやる」

「楽しい覚悟だ。君は面白い」

 そう言って、
 管理人は、心底楽しそうに、ニコっと微笑んだ。

「センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く