センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

33話 ……辛いなぁ……


 33話 ……辛いなぁ……

「面倒事は、俺が、全部引き受けているんだから! せめて、てめぇらには、俺を喜ばせるピエロの役割ぐらいは果たしてもらわにゃぁな!」

 センは止まらない。
 12000%を目指して駆け抜ける。

「てめぇらみたいな無能のカス女にできることといったら、そのぐらいが精々だろう! というわけで、そこの気色悪い緑色! 俺に感謝の言葉を述べろ。『センエース様、ありがとうございます。なにもかもすべて、あなた様のおかげです。素敵。抱いて』――はい、リピートアフタミッ、セイッ!」

「……」

「どうした、グリーン! 命の王である、このセンエース様が感謝の言葉を述べろと言っているのだ! こうべをたれてつくばえ!」

「……なんだか、可哀そうで見てられないにゃ」

 そう言ってから、ツミカは目を閉じて押し黙った。
 いつもはゴチャゴチャと、クソやかましい、その口を真一文字にして、
 センを意識から外そうとしているように見える。

 そんな彼女を横目に、
 それまで黙っていた紅院が、

「……センエース様。なにもかも、すべて、あなたのおかげです。ありがとうございます」

 そう言って、深々と頭を下げた。
 少し、体が震えている。
 彼女もプライドが高いので、言いたいことは山ほどあるのだが、
 しかし、この状況では何も言えないから、ただ震えている。

 ――そして、彼女の『奥』では、ただの恥辱だけではなく、
 もっと、深い絶望に属する何かが蠢いていて、
 その不快感に嗚咽しそうになりながらも、

「この世界を救っていただけていること……心から……感謝しております……」

 徹底して下手に出る紅院。
 続いて、トコと黒木も、頭を下げた。

 黙って目を閉じている茶柱と、
 頭を下げている三人。

 そんなK5を見ながら、
 センは、心の中で、

(……ああ……辛いなぁ……)

 ただの本音をつぶやいていた。

 ここまで、とにかく『嫌われること』に必死で駆け抜けてきたため、
 目の前の現実を直視できていなかった。

 しかし、あらためて、じっくりと、この状況と向き合ったことで、
 センは、純粋な『辛さ』に苛まれる。
 当たり前の話だが、『大事な人から嫌われる』のは苦しい。
 ここまで、必死になって頑張ってきた理由は、
 彼女たちを守りたいから。

 無限ループの底に沈んで、地獄をかけずりまわって、
 それでも救いたいと願うほどの相手に、
 とことん嫌われなければいけない、
 という、暗闇の底で、センは、普通に泣きそうになった。

 本当に苦しくてたまらない。
 『なんでこんなことをしなければいけないんだ』という嘆きが止まらない。
 あまりにも辛すぎて、涙が溢れそうになった――が、
 寸でのところで、センは我慢した。

 そして、自分に言い聞かせる。
 二度と無様は晒さないと誓っただろう。
 俺は、すでに、ヒーロー見参を叫んでいる。
 最後まで、『ピエロ(ヒーロー)』であり続けろ。
 ――と、必死になって自分に言い聞かせる。

 奥歯をかみしめて、

(失いたくない……それが、俺の中で、一番大事なワガママだ……他はどうでもいい……こいつらが、俺を憎もうが、嫌おうが、知った事か……失わずにすむのであれば、救えるのであれば……全部、背負ってやるよ……憎悪も嫌悪も忌避も蔑視も、全部受け止めて、俺は前に行く)

コメント

  • 閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

    だいぶ珍しいと思いますね。ただ、この作品においては、そのルビこそが、もっとも似合うと、私なんかは、そう思うんですよねぇw

    0
  • 『天』

    『ヒーロー』を英雄だったりバカだったりのルビつけて読む作品は知ってますけどピエロは初めてだなぁ...

    1
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