センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

57話 ズルい男。


 57話 ズルい男。

 エレベーターで、一番下まで降りたセンは、
 そのまま、いっさい、寄り道することなく、
 リムジンに戻って、

「はい、じゃあ、学校に帰ろう」

 極めて、たんたんと、帰宅をうながす。

「このとんぼ返り……遠足として成立しとるんかなぁ」

 と、ボソっとつぶやいたトコに、
 センは、

「成立しているわけねぇだろう。俺が時空ヶ丘の理事だったら留年させている。まあ、俺が理事だったら、主体性遠足などという、こんなワケの分からんコトをやらせたりしないが」

 と、根本からの否定を決め込みつつ、
 センは、帰ってからのアイテム探索のための休憩に入る。

 ちなみに、瞬間移動で帰ったら、その瞬間に幻爆が舞うので、
 こうして、おとなしく車に揺られている。

 散々、多角的な流れを試してきた結果の今。
 だから、愚かな間違いの一手は打たない。
 粛々と、正しいルートをなぞるセン。

 ただ、これが『本当に正しいルート』なのか、今のセンには分からない。


 ★


 夜まで、ひたすら、銀の鍵を探索し、
 夜になったら、携帯ドラゴンのサーチで銀の鍵以外のアイテムを探す。

 そんなのんびりとした時間も、リミットが近づいてきた。

「さて……それじゃあ、そろそろ飛ぶか……」

 『全員の首が爆散したのを確認してから飛ぶ趣味』は持ち合わせていないので、
 幻爆が舞う直前でタイムリープを決め込もうとするセン。

 そんなセンに、
 紅院たちは、色々な言葉をなげかけた。

 その大半は、感謝の言葉。
 あふれ出る想いをセンに伝える。

 その全てを受け止めたセンは、
 最後に、

「……ありがとう」

 素直なだけの言葉を残した。
 『返報性の原理』というわけでも、
 『空気を読んで場に合わせた』というわけでもない。

 ただ、『感じたこと』をそのまま口にした。
 それだけの話。

 そのあまりにも素直すぎる反応に、
 ヒロインズは、全員、ハっとする。

 感情が膨れ上がった。
 と同時に、なくしたはずの記憶が頭の中で膨らんでくる。

 おおくの想い。
 救われた記憶。
 与えられた愛。

 全部が膨れ上がって、爆発しそうになって、

 けど、
 もう、タイムリミットだから、

「――お前らを失いたくない。だから、俺は……まだ、頑張れる」

 少しだけ素直に、そう言って、
 センは、銀の鍵を天に掲げた。

 過去へと飛び立とうとするセンの目に、
 涙を流している彼女たちの姿が映った。

「ズルい」

 と、誰かが、そんなことを言った。
 誰が言ったかは分からなかった。
 もしかしたら、全員が言っていたのかもしれない。





 ★





 ――目が覚めると、
 代り映えのしない『初日の朝』だった。

 何の変哲もない、いつもの始まり。

 センは、ベッドから起き上がって、
 すべてのアイテムが問題なく引き継げているか確認してから、

「……ロイガーやウムルと戦うのもしんどいが……一番キツいのは、やっぱり、最終日かなぁ……」

 などと、特に意味のない本音を口にしてから、

「さて……と」

 のっそりと、仕事に取り掛かる。
 まずは、黒木に電話。


「お前が小三の時に書いていた自作小説の主人公の名前は……ソンキー・ウルギ・アース……間違いないな?」

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