センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
35話 イメージのインストール。
35話 イメージのインストール。
「クルルーは、そこまで強くねぇ……ここまで、芯のある強さではなかった。数値が底上げされただけじゃない。そもそも別物。お前は誰だ?」
センは、肩で息をしながら、
「俺にとって、クルルーとの闘いの記憶は、もう20年も前のことだが、しかし、ハッキリと憶えている。クルルー・ニャルカスタムは、確かに、べらぼうに強かったが、それは『数値が膨大だった』というだけの話。今のお前は、完全に違う何か」
「お察しの通りだ、センエース。私は『クルルーであること』に変わりはないが、しかし、それだけではない」
前を置いてから、コホンとセキを一つはさんで、
「私の中には、『クトゥルフ・オメガバスティオン』の記憶が存在する。私は知っている。『クトゥルフ・オメガバスティオン』が、いかに狂った存在であるか」
「……それが……どうした……? 知っているからなんだってんだ?」
「私の記憶の中の『クトゥルフ・オメガバスティオン』のイメージを、ニャル様の魔力で、私の芯にインストールしてもらった」
「記憶の中のイメージをインストール……ん……記憶の中の……ん?」
よくわからないという顔をするセンに、
クルルーは、
「いまいち理解しかねるという顔をしているな。別に深く考える必要はない。私は、私の芯に、クトゥルフ・オメガバスティオンの記憶をぶちこんだ。それだけの話」
「記憶……をぶちこんだからって、何か変わるのか? シャドーとか、思念とかなら、まだなんとなく分かるんだが、記憶のイメージをインストールしたところで、何が変わ――」
「世界との向き合い方が変わる」
「……」
「影でも思念体でもなく、単なる、私の中に刻まれた記憶。ただのイメージ。それを、芯にぶちこむだけで、私は、こんなにも大きくなれる。クトゥルフ・オメガバスティオンが、どれだけの存在か、少しは見えてきたか?」
「……」
「クトゥルフ・オメガバスティオンをナメるなよ、クソガキ。やつこそが、全世界の歴史上、最も『最強』に近づいた者」
「正しく銀メダリストってことね。はっ……別に、一度もナメたことはねぇが……まさか、そこまでとは思っていなかったから、普通にドン引きしている……ぶっちゃけ、勝てる気がしねぇ」
「だが、勝てなければ、このループは終わらない。貴様に遺された道は一つ。勝つこと。ただ勝つこと。それが貴様の宿命。ヒーローの宿命」
「……大変だな……俺の宿命……」
深く長いタメ息を吐いてから、
センは、
あらためて、拳を握りなおした。
「俺はヒーローじゃないんだけどなぁ」
ボソっと、そうつぶやくセンに、
クルルーは、
「つい、さっき、ヒーロー見参と口にしていなかったか?」
と、当然の疑問符を投げかけてきた。
「あんなもんは、ただの掛け声だ。『いくぞぉ』とか『えいえいおー』とだいたい同じだ。中身もクソもない、ただの意気込み。……いや、嘘だな。そんな爽やかなもんじゃねぇ。あの言葉は、結局のところ、からっぽの嘘でしかない。虚勢というやつだ。並べ立てた嘘八百。それ以上でもそれ以下でもない」
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