センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

49話 主役は俺だ。お前じゃない。

 49話 主役は俺だ。お前じゃない。

「……『てめぇ』の方が高性能なのは知っている……『てめぇ』が誰か知らねぇが、てめぇが、世界で一番、俺をイラ立たせる存在だという事も知っている……」

『ワシの方が上やと認めるなら、ワシに任せればええのに。お前、もしかして、アホなんか?』

「俺は引くほど頭が悪いよ。だから前に進める。少しでも賢かったら、とっくに自殺している。賢い命は、この歪んだ世界で生きていけねぇ」

『その理論が正しいとすると、ワシもアホということになるなぁ。自殺を考えたことは、あんまりない。ゼロとは言わんけど』

 その言葉に対し、
 センは、まっすぐには応えなかった。

 いや、これまでの返答も、すべて、まったく、まっすぐではないが、
 しかし、もっとゆがんだ想いでもって、
 センは、そこから先の言葉を紡ぐ。

「――『てめぇ』が嫌いだ。似た者同士でありながら、いつだって俺を置き去りにしていくお前を、俺は絶対に許さない。てめぇなんかに譲るぐらいなら、この荷物を抱えたまま死んだ方がはるかにましだ」

 言いたいことを一通り言ったあとに、



「主役は俺だ。おまえじゃねぇ、すわってろ」



 そう宣言してから、
 センは、ぶっ飛んだ目でマイノグーラをにらみつける。

 完全にラリった瞳だが、
 しかし、光だけは灯っていた。

 その目を見て、マイノグーラは、

「おかしな人間だ。『最も尖った絶望』で、貴様の精神を削ったというのに、どうして、貴様の目には光がともっている? 私は追い打ちをかけたはずなのに、どうして、貴様の気力は回復している? 意味がわからない」

「俺を相手に、合理的な理屈なんか求めても仕方がねぇんだよ。俺自身は、いつだって、『なるべく、合理的かつ論理的な人生を生きたい』と願っているが、しかし、実際のところは、まったくうまくいってねぇ。自分でも、自分のことが、基本的に、まったく理解できてねぇ。どうして、ここまで頑張れるのか、俺は俺を一ミリも理解できてねぇ。もっと普通の人間だったらよかったのに、と、無意味なことを願いながら、それでも、時折……つぅか、『こういう場面』では、いつだって、『俺が俺でよかった』とも思う。だって、だからこそ……俺がバチバチにラリっているからこそ……」

 オーラが膨れ上がる。
 魔力が練り上げられる。

 とっくに底をついているはずの全部が、
 おどろくほど力強く沸騰する。



「守りたいものを守れる。とりあえず、今は、それだけが全部でいい」



 理解と覚悟が一致する。
 一つになって、自由になる。



「――虹気――」



 そうつぶやいたと同時、
 センのオーラの質が変わった。

 ふと、頭に浮かんだ言葉が、実像の輝きとリンクして、
 センエースの全てを包み込んだ。

 センの全身を包み込む虹色のオーラは、
 それまでの輝きとは性質が随分と異なる。

 力強いかと言えば、そういうわけでもなかった。
 なんだか不思議なまたたき。

 方向性は不明だが、
 しかし、間違いなく加速している、
 という感覚だけはあった。

 ソリッドの利いた鋭角の補助線。

 自分自身を包み込む虹色の輝きを見つめながら、
 センは、ボソっと、


「諦めることを諦めた時、いつだって、俺は、少しだけ自由になれる。この感覚が……俺は少しだけ好きだ。大好きじゃねぇけどな」

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