センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

25話 年数と質量。


 25話 年数と質量。

 スーパーセンエースは、宣言してみせた。
 英雄の証明。
 命の最果てに届いた王の真髄。

 ――そんな、地獄の死刑宣言を受けて、
 センは、

「……俺ごときを相手にするのに、『決め台詞』を使うんじゃねぇよ。もったいないだろうが、いろいろと」

 軽口で応戦する。
 なんの中身もない言葉。
 けれど、今だけは、どうしても必要だった言葉。

 スーパーセンエースは、膨れ上がったオーラを、さらに加速させて、

「いくぞ、パチモン。俺が誰なのか、徹底的に教えてやる」

「もう、知っている。お前はスーパーセンエース。俺を超えた変態だ」

 言葉を交わし合いながらも、
 互いに、互いの武をぶつけあう。
 高次の会話を繰り広げる両者。

 踏み込み足に心を込めて、
 両者、たがいに、『距離』と向かい合う。

 本能のノイズ。
 ズレて、ゆがんで、
 空気ごと矯正。
 その繰り返しが、たがいの道をつくる。
 錆びた標識でも、方角は分かった。
 『何をすべきか』を視認する。
 命の象(かたち)が、少しだけ見えた気がした。

 しかして、だからこそ、攻め手にあぐねるセン。
 全ての攻めを、さばかれて、いなされる。

(完璧に散らされる……俺の一手先を覗いてきやがる……)

 センは奥歯をかみしめる。
 と、同時に感嘆もした。

(俺が軌道を修正するよりも前に、受けのテンポを変えてくる……)

 スーパーセンエースの『積み重ね』に、
 心底から敬意を表する。

(恐ろしく濃度の高い練度。その視点が出来上がるまでに、いったい、『どれだけのしんどさ』を、繰り返してきた? 俺よりも……どれだけ……)

 アダムも相当なものだったが、
 しかし、スーパーセンエースのソレは、
 アダムを遥かに凌駕していた。

 芯の深みが違った。
 深く、深く、浸透していく。

 200億がどうとか、そんな数字はどうでもよかった。
 この段階において、『重要なこと』は、そんなことではなかった。
 『時間をかけるだけ』なら、誰にでも出来る。
 いや、まあ、もちろん、『誰にでも』というわけではないが、
 しかし、『時間をかけるだけ』なら、脳死状態でも可能。

 重要なのは、『積み重ねた時間』の中で『何』を成してきたか。
 『何』をどれだけ積み上げた時間なのか。
 それが最も大事な視点。

 ――スーパーセンエースは、センを圧殺しようとはしなかった。
 同じ程度の出力を保つことで、『深い部分の理解』を求めた。

 エゲつないほど高次の会話。
 『対話の先にある何か』を二人で求めあう。

 両者とも、艶やかに空間を駆け抜けて、
 大気を蹴散らしながら、
 この空間の隅から隅までを舐めまわすように、
 重たい拳を荘厳に交わし合う。


「「――閃拳――」」


 弾けて混ざる、二人の拳。
 センエースの拳と、センエースの拳。

 磨き上げてきた二人の拳が互いに、互いの肉に食い込む。

「良い拳だ、パチモン。お前の閃拳は、質が高い。深い積み重ねを感じる」

 そんな、スーパーセンエースの賞賛に対し、
 センは、悔しさをかみしめながら、

「スーパーセンエース、お前の閃拳はアレだ。何がどうとは言えないが、ちょっとダメだな。ま、なにがどうとは言えないが」

 と、嫉妬心で歪んだ言葉を吐き捨てる。


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