センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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76話 アクバート・ニジック・J・ヤクー。


 76話 アクバート・ニジック・J・ヤクー。

(厄介な立場だ……)

 と、アクバートは、心から思う。
 今だけじゃない。
 ずっと昔から、思っていた。

 ゼノリカの理念や行動指針に対し、
 アクバートは、ずっと『面倒』だと感じていた。

 アクバートは善人ではない。
 『根の部分』だけでいえば間違いなく悪人の類。

(もし、ゼノリカが存在しなければ……もっといえば、あの『バケモノ三人』がいなければ……)

 『三至天帝』という超常の存在さえいなければ、
 アクバートは、もっと自由に、自分のワガママを世界に刻み込むことができた。

 自身のカリスマ性を前面に押し出して、
 世界を支配することも不可能ではなかった、
 ――と、アクバートは考える。

 実際、アクバートのスペックは抜群に素晴らしく、
 『独裁者』になれる可能性は大いにあった。

(もし、そうなっていたら……)

 と、アクバートは妄想する。
 自分が独裁者として世界を統べているシーン。

 それは、
 非常に理想的な光景であり、
 そして、
 非常に退屈な光景でもあった。


(もし、そうなっていたら……きっと、私は、息子に倒されることを望んでいただろう……)


 破滅願望とか、ドM気質とか、
 そういう系統の話ではない。
 ゼノリカに染まったアクバートは、『非常に複雑な感情』を胸に抱きながら生きることになった。
 もし、『ゼノリカ』を知らなければ、
 『息子に倒されること』を望んだりはしなかっただろう。

 アクバートはゼノリカを知ってしまった。
 『すべてを包み込む光』を知ってしまった。
 その『尊さ』と『気高さ』を知ってしまった。

 だから、アクバートは思う。
 『己の支配欲に包まれた世界』の、
 『なんと、ちっぽけなコトか』と。

 ゼノリカに支配された世界の美しさと比べれば、
 己によって支配された世界は、吐き気を覚えるほど薄っぺらい。

(私は弱い……武にはそこそこ自信があるし、民衆を動かすカリスマも……まあ、なくはないだろうとは思っている……だが、私の器は、『ゼノリカ』を超えるほどのものではない)

 アクバートは、ソレを知っている。
 ソレを知っているからこそ、アクバートは、限界を超えて強くなれた。

 アクバートは、ゼノリカを『厄介だ』と認識している。
 だが、ゼノリカに対して、
 『なくなってほしい』と思ったことは、
 実のところ、これまでの人生で、一度もない。


「――ダンテレイ――」


 強大な照射系の魔法で、センを貫こうとするアクバート。
 しかし、

「なかなか質の高い『かめ〇め波』だ」

 と、褒めながらも、

「まあ、とはいえ、それにあたるほど、俺はノロマじゃないが」

 センは、アクバートのダンテレイをサラリと回避する。

「――俺には遠く及ばない。それは事実だが、しかし……強いな、アクバート。お前は俺が今までに見てきたどの化け物よりも強い」


 アクバートの強さを認めるセン。
 アクバートの強さは、ラピッドを大幅に超えていた。

 ラピッドの強さからも、
 『めまいがするほどの積み重ね』を感じたが、
 しかし、アクバートから感じるソレの質量は数段階上だった。


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