センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

44話 はっ……夢か……

 44話 はっ……夢か……

 放散された小さな塊は、ゆらゆらとただよって、
 センの足元にある『図虚空』の中へと注がれていく。

 数秒の間をおいてから、
 センは、

「同意見だぜ」

 そう呟き、バタリとその場に倒れこんだ。
 体を支える腕を二本ともなくしているので、
 ガッツリと、顔と胸に衝撃がきた。
 バッチシとアバラが折れたし、鼻の骨も曲がったが、
 そんなことを気にしている余裕はなかった。

(……また……頭が……白く……)

 明らかなオーバーロード。
 スーパーブラック体制で豪速回転させてきた脳が、
 当然のようにストを起こした。

 反逆の狼煙(のろし)。
 休息を強引に強奪していく。

 意識を失ったセン。
 切られた腕から血があふれる。

 その様子を見ながら、
 ツミカは、

「……メギド……」

 自身の携帯ドラゴンに、

「私の命全部を使ってもいいから……このバカを助けて」

 そう命令すると、
 メギドは、

「きゅいっ」

 元気よく返事をして、
 ツミカの魔力を使い、
 センに回復魔法を施していく。

 幸い、両腕の切断以外に、
 大きな損傷や、呪い等のデバフはなかったため、
 多少、魔力を消費するだけで、
 全快させることができた。

 ちなみにツミカの回復魔法は、
 ヒーラー特化である黒木の回復魔法よりも上。

 基本、万能で、おまけに、だいたいスーパーハイスペック。
 それが彼女。
 茶柱罪華。



 ★




「――はっ……っ!」

 ふいに、パっと目を覚ましたセンは、

「はぁ……はぁ……」

 軽く息を荒くしつつ、
 ここが自分の部屋であることを確認し、
 その流れのまま、
 自分の両腕を確認する。

 前腕、上腕、親指から小指まで、
 すべてが綺麗にそろっていた。

「……よかったぁ……全部、夢だったぁ……だよねぇ……」

 開口一番、そんなことを口にした。

 だが、そんなセンの言葉に、
 茶柱が、

「おはよう」

 そう声をかけてきた。

「……ああ、まだ夢の途中か……」

「どうして、そう思うの?」

「俺の部屋に茶柱がいるわけがないから」

「そうね。昨日までだったら、ありえなかったわね」

「あと、口調も本物と違う。よって、お前は、本物の茶柱ではない! QED!」

 などと、無駄な抵抗を続けるセンに、
 茶柱は、冷めた目で、

「一つきいていい?」

 と、ぶった切るような前を置いて、
 センの返事を待たず、

「なんで、助けてくれたの? いくら考えても、意味が分からないんだけど?」

 そう尋ねてきた。

 センは、

「……」

 2秒ほど間をおいてから、

「言ったはずだ。すなわち、因果論における確定収束上の特異点的な刹那関数の――」

「ナイフの性能を試したかったんじゃないの?」

「……その結論に至るまでの道筋について詳しく解説していたんだよ」

「なんでもいいけど、とりあえず、言いたいことは一つ。私が聞きたいのは、そのクソみたいな言い訳じゃない。私は、あなたが私を助けてくれた、本当の理由が聞きたい」

「人は勝手に助かるだけって、昔の偉い人が――」

「うるさい、だまれ」

「……」

「なぜかと聞いているの。さっさと答えて」

「……」

 センは、うつむいて、さらに数秒、黙りこむ。

 重たい沈黙の時間が5秒ほど経過したところで、
 センは、覚悟を決めたような顔になり、
 グっと顎をあげて、茶柱の目を見つめ、





「ヒマだったから、つい、出来心で。――反省はしている」





 などと供述した。

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