センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

52話 裏閃流にも負けない必殺技。

 52話 裏閃流にも負けない必殺技。

 オメガが最初に、右の拳をギュっと握りしめ、
 魔力とオーラを、これでもかと込めてから、
 センの顔面(左頬)に、ガツンとたたきつける。

 衝撃波で、世界がブルルっと震えた。

 コンパクト化されているせいで、
 はた目には、ただの拳に見えるが、
 その火力のエゲつなさは、
 まさしくコズミック級。

 そんな、エゲつない拳を、まともに受けたセンは、
 しかし、口から軽く血を流す程度で、

「じゃあ、次は俺だな」

 などと、軽い感じで、うそぶいてから、
 右手にオーラと魔力を集中させる。

 そして、そのまま、
 ギュっと握りしめた右の拳を、
 オメガの左頬にドカンと叩き込む。

 閃拳ではない。
 ただの拳。

 なのに、


「ぬぅぉおおっ……」


 オメガは、殴られた頬を左手でおさえながら、
 小さくうめき声をあげる。

「……ぃっ……たぁ……」

 涙目になりながら、
 普通の本音をこぼすオメガ。

「……くぅ……」

 歯をくいしばり、
 目に浮かぶ涙をサっと拭いてから、



「……全然、きかんな」



 と、新喜劇レベルの強がりをかましてくる。

「……」

 無言のまま、左の頬を差し出してきたセンに、
 オメガは、

「……上等だ」

 そう言いながら、
 また、同じように、拳をたたきつける。



 ――その後、17回ほど、拳を交わし合った両者。
 別にセンも、無傷というわけではないのだが、
 明らかに、オメガの方が、損傷が大きい。

「……はぁ……はぁ……」

 満身創痍という顔をしているオメガに、
 センは、

「もう積み技はないのか?」

 その問いかけに対し、
 オメガは、

「ああ……もう、ない。お前の可能性をトレースして、覚悟の全てをブチ込んで……その結果が、今の俺だ」

「……そうか」

 含みのある言葉をこぼすセン。
 オメガは、

「……」

 数秒の沈黙を溜めてから、
 センの目を見て、



「センエース……俺は、強かっただろ、ちゃんと」



 少しだけ弱い声で、そう尋ねた。
 口の中が切れているせいで、声がかすれている。

 センは、オメガの問いを咀嚼して、

「……ああ、強かったよ。お前は強い」

 シッカリと肯定してから、

「けど、俺の方が強い。ぶっちぎりで強いわけじゃないが、明確に、俺の方が強い」

「はは……みたいだな」

 そうつぶやいてから、
 オメガは、パチンと指を鳴らし、

「――神の慈悲――」

 回復魔法で、傷をいやす。
 一瞬で元通りになると、

 まっすぐに、センを睨みつけ、

「言っておくが、俺にだって、切り札はあるんだぜ」

 ボソボソと、

「お前の裏閃流みたいな必殺技が、俺にもある。……けど、その全てを使っても、俺はお前には勝てないだろう」

 オメガの諦観は、
 『諦めたらそこで試合終了』とか、
 そういう類の話ではないのだ。

 現状は、ムリにたとえるなら、
 『相手の手札が分かるポーカー』みたいなもの。

 オメガは、キングのファイブカード。
 センは、エースのファイブカード。

 どっちもエゲつないほど強いし、カードパワーの差も少ないが、
 しかし、
 勝つのはセンの方。
 ルール的に、事実的に、結果的に、間違いなくそう。

 ――これは、そういう状況。

 それを理解しているからこそ、
 オメガは天をあおぐ。

「俺だって、必死になって磨いてきた。だから、『通じない』とは思わない……が、決定打が足りない。お前の強さに……俺は一歩、たりていない」

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