センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

9話 『ニョグタ』VS『カンツ』

 9話 『ニョグタ』VS『カンツ』

 ニョグタから飛び出た『想定外の回答』を耳にしたカンツは、
 普通に首をかしげて、

「……いや、ちがいますけど?」

 と、疑問符だけを口にする。

「ワシはカンツだと言っとろうが……というか、貴様、なぜ、『センエース』を知っている? 事前調査の結果によると、この世界に、『センエース』という偶像の伝承はないはず」

「詳しくは知らない……しかし、記憶の片隅に、デジャブのようにのこっている。圧倒的な、力の化身……世界を喰らいつくす、運命の暴君……」

 ――その記憶は、ループの残滓。
 99回も繰り返してきたがゆえの残り香。

「そんなものは、単なる妄想だと思っていたが……納得だ……貴様の力は……命の王を名乗るに値する……」

「違うと言うとろうに、人の話を聞かんやっちゃなぁ! まあ、ワシも他者の話をまともにきかない系の人間だから、文句を言う資格はないんだがなぁ! がはははは!」

 豪快に笑うカンツに、
 ニョグタは、

「世界の深淵と向き合う闘神センエース……それほどの化け物が相手ともなれば、ハンパは許されない。私の全てをみせよう」

 そう言うと、
 ニョグタは、自分の胸に、ズブリと、腕を沈ませた。

 そして、強く、心臓を握りしめて、

「センエースよ……見るがいい。これが、本当の私だ」

 そう宣言すると同時、
 ニョグタの全身が発光する。

「私を構成する自我の大半をささげる。未契約時限定の時限強化。ただ一度しか使えない覚悟の表明。これより、私は、私ではなくなる。ニョグタという命ではなく、ニョグタという兵器となる」

 ニョグタは寂しげに、

「……そうなることを望むわけではない。私は私という個でありたい。しかし、センエースが相手ともなれば、ワガママを言ってはいられない。だから、決意を賭そう。私の全てを懸ける。私は私をささげ、真の私となる」

 虹色のオーラが圧縮されていく。
 命がまたたく。

 際限なく大きくなっていくニョグタのオーラを目の当たりにして、
 カンツは、

「おお、まだ膨らむのか……」

 目を輝かせた。
 決意と覚悟に彩(いろど)られた命の輝きは、
 いつだって、カンツの胸を打つ。

「ワシをセンエースだと勘違いする、そのポンコツぶりは笑えるだけだが、しかし、貴様のオーラ総量だけは、畏怖にすら値する!」

 言いながら、
 カンツは武を構える。

「大きいなぁ! 大きいぞ、ニョグタ! 三至以外で、それほどの大きさを見たのは初めてだ! 強いのか?! 強いんだろうなぁ!!」

 新発売する『期待の大作』を前にしたゲーマーのように、
 胸を躍らせるカンツ。

 そんな彼に、ニョグタは、

「――さあ、センエースよ。私の全てを受け止めてくれ」

 そう言うと、
 迷いなく、
 カンツの懐に飛び込んだ。

 鮮やかに、美しく、
 純粋の兵器のように、冷徹に、

 ニョグタは、カンツを壊そうと軽やかに舞った。

 暴力は昇華され、
 命の華が萌(も)ゆる。

 音が結晶になる。
 流れゆく時間が、
 まるで、質量のある残像みたいに、
 奇妙な陰影を残しながら、
 ほんのりと、いびつなザラつきを残していた。

 ケイデンスが上がっていく。
 際限なく。
 無造作に。


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