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41話 罪と罰。

 41話 罪と罰。

「バカは徹底的にやらないと同じ事を繰り返す」

「真理ね。けれど、だからといって、ふりかざしていいものではない。クズに道理を教えるのも、上に立つ者の仕事の一つ。けれど、そこには明確なボーダーがある」


 ――状況であったり、言動の内容であったり。

 『超えてはならない一線を超えた者』に対しては、
 『罰』を執行しなければならないが、
 しかし、先ほどのボーレの言動は、
 『ボーダーを超えている』とはいいがたい。

 もし、ボーレが、
 『アモンの地位を知った上でかましてきた』、
 『社会システムに対する明確な反逆の意思を示した』
 というのであれば、また、少し話が変わってくるが、
 現状のボーレは、
 『しっかりとした間違い』を犯してはいるものの、
 しかし、『明確な罪』を犯したとはいいがたい。

「アモン。あなたにも『裁量権』はあるけれど、それは、『過剰なリンチを許す』という暴力許可証ではない。あなたの能力と覚悟と献身に対する信用の証。その『証の重さ』が理解できず、闇雲に権利と力を不用意に振り回すバカは……抹殺対象とみなす」

「……」

「……」

 ピリピリと重たい空気が流れる。
 両者とも、黙ったまま、強い眼力で、にらみ合う。

 五秒後、
 アモンが、

「だいぶ肩もほぐれてきましたし、施術はこのぐらいにしておきましょうか。お疲れさまでした、先輩」

 そう言って、ボーレの肩から手を放す。

 アモンは、ボーレの肩に、回復魔法をかけながら、

「舎弟になった以上、今後も定期的に、肩をもませていただく所存です……よろしいですよね?」

「あ、いや……肩は……もう二度と、揉まなくていいかな」

「それはいけません。舎弟になった以上、絶対に、定期的に、肩をもませていただきます。もちろん、肩以外にも、腰や足も、すべてお任せください。ん? おっと、気付かなくて申し訳ありません。目が充血していますね」

 そこで、アモンは指の関節を鳴らしながら、

「この充血具合……もしかしたら、ヘルペスかもしれませんね。ということで、いったん、くりぬいて、強めの酸で殺菌しましょう。ヘルペスはしつこいですからねぇ。念入りに殺していかないと」

 とニコヤカに言いつつ、
 眼球に手を伸ばしてくるアモンに、
 ボーレは、

「クビ! 舎弟、クビ!」

 あわててそう叫ぶ。

「舎弟とか、俺、そういうの好きじゃないし! ちょっとしたジョークだから! 本気にするなよ、もー、あははぁ!」

「……そうでしたか、気付かなくて申し訳ない。冗談には慣れていないもので」

 そう言いながら、アモンは自分の席に戻り、

「僕に何か用がある時は、いつでも声をかけてください。舎弟になる準備は、常時万端ですので」

「……あ、うん、はい」

 と力なく返事をしてから、
 すごすごと、自分の席に戻るボーレ。

 席につくと同時、
 険(けわ)しい顔で、

 ゲンの肩に、
 ドーン!
 と、重めのグーパンをいれる。

「痛いんですけど」

「俺は、その何万倍も苦しんだんだ!」

「お前が悪いんだろうが」

「お前が止めなかったのが悪い! 俺は被害者だ! 被害者は常にただしい! というわけで、今後、龍委として働いていく上で発生する面倒事は全部任せた!」


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