センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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76話 秀才の宿命。

 76話 秀才の宿命。

「華麗だな。ちょっと前の俺だったら腕を飛ばされていた気がするぜ。それで実力の半分以下とは、マジでおそれいる」

 キュインと、鋼が響き合ったかと思った直後、
 ゲンの太刀は、ケムスの剣を正確に弾いて、
 逆に、ゲンの方が、ケムスの懐へと忍び込んでいて、

「――ゲン・エクセレント――」

 豪速のグリムアーツで切り込んでいく。

「っ」

 ゲンの機敏な動きに、一瞬だけ戸惑ったものの、
 しかし、ケムスは、すぐに頭を冷静に回して、
 ゲンの太刀に、自分の剣を合わせていく。

 キュインと、鋼同士が響き合う。
 キュイン、キュイン、と美しく、何度も。

 ――それから、およそ五分の剣戟。
 互いに、互いの領域を支配しようと、
 繊細かつ大胆に、
 刃を乱れさせた。

 結果、


「……どういうことだ? さっき刃を交えた時と、動きが全然違うじゃないか」


「言っただろうが、準備運動は終わりだって。……まあ、最近、モンスターとの戦闘ばかりで、対人戦に慣れていなかったから、『ちょいと勝手がつかめなかった』って理由も無くはないが」

「……そもそも、君は、そんなに強くなかったはずだ。『子供にしては、それなりに基礎が整っている』――その程度が関の山だったはず。……どういうことだ、ゲン・フォース」

 途中で、ケムスは、距離をとり、そんな言葉を投げかけた。

 ゲンは、呼吸と体勢を整えつつ、

「ちょっと前に、かなり強いバケモノと戦ったんだが……以降、いろいろなものが見えてきてな……」

 『セイバーリッチ・プチ』との闘いで、
 『ゲンの中で起きた革命』は、
 一瞬の煌(きら)めきでは終わらなかった。
 どこか不明瞭だった『武の向こう側』に触れたことで、
 『高次戦闘という、あやふやな概念』が、
 ゲンの中で『確かな器』になった。

「必死に積んできてよかったと、心から思った。おかげで、『ここ』からの景色を見ることができた」

 ふれるものすべてが、きらきらひかる。
 積み上げてきた命が、ぴかぴかうたう。

「簡単に言えば、コツをつかんだんだ。それまで、単一的に磨いてきた一個一個の要素が、相互に繋がり合って、いつしか、俺の器になっていたことに気づいた。言語学習なんかではよく起こるブレイクスルーだな」

 膨大な量の情報を頭に詰め込み、
 それぞれの作用に対する反射的理解を経ることで、
 ようやく起こり得るブレイクスルー。

「入学したばかりのころは、あんたの剣がひどく遠くに感じていたが……今は、距離がハッキリと見える……あんたは強い……俺よりもはるかに強い……けど、影が見えないほど遠くじゃない……俺はいける。そこまでいける。超えられる」

「……ふざけるな……僕が積んできた想いを、覚悟を……ナメるな、クソガキ」

「ナメてねぇよ。あんたは強い。すごく強い。褒めてつかわす」

「君のようなハンパなクソガキが、僕に対して、上からモノを言うな! たかが秀才の分際で、天才のふりをするなよ、滑稽だ! 『本物の天才には敵わない』という現実の前で無様に立ち尽くせ! それが、凡庸な秀才の天命だ!」

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