センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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63話 永遠に届かない。

 63話 永遠に届かない。

 バンスールは、贅沢にも、
 神の王から、丁寧な解説を受けた。
 だが、あまりにも丁寧すぎて、

(……わからない……なにも……)

 バンスールには届かない。
 1ミリも理解できない。

 センエースの解説は続いた。
 神の王は、丁寧に、丁寧に、
 『ソンキー・ウルギ・アースの武』という、
 『異質に芸術的な天才性』を伝えようとした。

 ――が、

(ソンキー・ウルギ・アースの神業。それほどの高みであっても……センエースには届かないのか……)

 ソンキーを知れば知るほど、
 センエースが遠くなるばかり。

(理解できない……つかめる気がしない……それほどの、遥かなる高みに在る『闘神の神業』をもってしても、超えることができない壁の向こう……それが……センエースの世界……)

 『無窮(むきゅう)の積み重ね』に溺れる。
 清澄(せいちょう)さの奥で、
 『弱さ』という極悪な牙がギラリと光る。

 ソンキーを知るほどに、
 センエースを知るほどに、

 バンスールの中で、
 自信という自信が、根こそぎ削がれていく。

(オレは……強いのに……)

 それは間違いない話だった。
 闘神の器を手に入れたバンスールは、
 間違いなく『清雅(せいが)な高み』にある。

 誰が相手でも無双できる究極の力。
 本来であれば『おれ、また何かやっちゃいました?』を通せる、
 チートの塊みたいな存在に至っている。

 だが、センエースの前では、何も通らない。

 引くほど自分と向き合ってきた力に、
 引くほど運命と向き合ってきた力に、
 引くほど現実と向き合ってきた力に、

 『何も積んでいないありふれたチート』を通せるわけがないのだ。

 『近しい領域』で、
 真正面から武を交わし合ったことで、
 バンスールは、正しく理解した。

(強すぎる……か、勝てる気が……しない……勝てるわけがない……)

 スペックで言えば、確実に、バンスールの方が上である。
 相性的にも、バンスールの方が圧倒的に有利。
 『ありきたりな数字』の上で言えば、
 バンスールは、センエースを超えている。

 けれど、それでも、
 バンスールは、
 センエースに勝てるイメージを、
 一ミリたりとも描くことが出来なかった。

 そんなザマだから、
 武を交わし合う中で、
 ついには、センエースもイラっときたらしく、
 たまりかねて、

「ヌルいって、だからぁ!」

 つい、そう叫んでしまった。

「もっと、こう! あるだろ! こう、ガツンとくる感じで! わかんないかなぁ! こう、バーンときて、グーンみたいな!」

 決して冗談を口にしているわけではない。
 もはや、これほどの領域に至ってしまうと、
 『明確なロジック』で伝えることは出来ない。

 自分でつかむしかないのだ。
 コピーのままでは永遠に届かない世界がある。
 『暴力的な自分』を表現する唯一無二の極み。
 そのコツだけは、
 自力で会得するしかない。

 けれど、
 『オリジナル』の『プライマル化』は、
 果て無き研鑽を必要とする。

 ゆえに、

「なんで、そう『微妙に弱い』んだよ!」

 センは憤る。

「一個、一個が、なんか、こう……ヌルい! 芯がないから、響かない! つぅか、単純にコピーが荒い! 模倣するなら、もっと、ちゃんとしろよ! それじゃあ、永遠に、オリジナルには届かねぇ!!」


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