センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

59話 そして、スールは理解する。

 59話 そして、スールは理解する。

「さあ、それでは『お遊戯会』をはじめようか。ハッキリ言っておくが、今のお前では、俺の足元にも及ばない。アポロギスは確かに強いし、事実、かつては大いに苦戦した……が、今の俺なら、造作もなく勝てる。あの闘い以降に俺が積んできた『地獄の数千年』をナメるんじゃねぇ」

 そう言うと、
 センは、空間を跳躍した。
 信じられないほどの制御能力。
 ありえないほどの高み。

 おどろくほど静かな瞬間移動。
 凪のように穏やかに、ただゆらめく閃光。

 そんな静寂から繰り出されたのは、
 なでるような拳。

 生まれたばかりの赤子に触れるような繊細さで、
 ゆっくりと、拳をあてる。

 それは『なんらかの技』というより、
 明瞭極まりない『徹底した手加減』で、
 なのに、

「がっはぁあぁぁあああああああああっっっっっ!!!」

 バンスールは白目をむいて吐血した。
 ダムが決壊したかのごとく、
 大量の血を口から噴射する。

「あぁああ……うぅう……ぶふっ……ぉ、重いぃ……なんだ、この重さ……ありえないだろ……ただの……なでるような拳が……どうして……なんで……」

 『くの字』になって、涙と血をこぼしながら、
 不可解な激痛の底で嘆き苦しむ。

 そんなバンスールに対し、
 センは、

「俺の拳が重い理由は無数にあるが、お前ごときじゃ、どれ一つとして理解することはできねぇよ」

 あえて『子供をあしらうような口調』で、そう言ってから、
 ガッっと、バンスールの頭を掴み、
 鼻先がぶつかり合うほどの近距離で、
 グっと眼力を強めて睨みつけ、

「俺が届いた世界は、無間地獄の最果て。すべてにおける命のリミット。だから『まだまだ未完成だった時の俺』でもなんとか倒すことが出来た『アポロギスと同じ程度』だと、今の俺の相手にはならねぇ。その程度の脅威だと、俺の可能性は開かない。……だから、頼むぜ、バンスール。その先に行ってくれ。俺を絶望させてくれ。俺は『俺を超えた俺』を知りたいんだ」

 あふれ出る欲望。
 輝きにコーティングされて、
 奇妙な艶(つや)すら感じた。



 ――そんなセンエースと相対するバンスールの『中』で、

 『スール』の意識は、
 センエースに触れていた。



 高次の無意識がセンエースという概念を捉えて離さない。
 『スール』は想う。


(なんという……大きな輝き……)


 理解できる大きさではなかったけれど、
 とても暖かくて、とても頼もしくて、
 だから、スールは、


(……セン……エース……これが……この煌めきが……)


 自己紹介を受けたわけでもないのに、
 しかし、魂魄が理解したのだ。

 あれがセンエース。
 偉大なる命の王。

(……俺は間違ってはいなかった……やはり、聖典は……ウソつきだ……)

 スールは思う。
 聖典を非難していた自分は間違ってはいなかった。

(……まったく表現しきれていない……神の輝きは……あの程度の文章で……すませていいものではない……美化どころか……もはや、侮蔑に等しい……足りない……まったく……)

 この上なく尊い輝き。
 最果てに至った魂魄の極地。

 この輝きに触れていると、
 心の全てが満たされていく。

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