センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

53話 ヌルすぎる作業ゲー。

 53話 ヌルすぎる作業ゲー。

「……めちゃくちゃな皮算用だな」

「正確性皆無の皮算用に頼らざるを得ないほど、俺は次のステージに飢えている。それだけの話だよ」

 そう言うと、カドヒトは、全身のオーラを充満させる。
 グっと、深みが出る。
 陰影が濃くなる。

 カドヒトは、穏やかな笑顔を浮かべ、
 まっすぐに、バンスールの目を見つめながら、

「それでは、はじめようか。『存在値10000』VS『存在値170』という、50倍以上の差がある『とんでもないハンディキャップ戦』を」

「闘いになどならない。いくら、貴様の戦闘力が高かろうが、これだけの差をひっくり返すことは流石に不可能」

「そうだな。普通なら絶対に不可能だ。50倍どころか、5倍だって厳しい。けど、俺は普通じゃないんでね」

 そう言ってから、
 カドヒトは、
 空間を跳躍した。

 テクニカルな瞬歩。
 颯(はやて)のごとく、軽やかに舞う。

 ――けれど、バンスールからすれば、遅すぎるムーブ。
 その目は、容易にカドヒトの動きをとらえる。

「見えているぞ。当たり前だがな」

 そう言いながら、
 バンスールは、
 豪速の瞬間移動で、
 問答無用に、カドヒトの背後をとって、

「異次元砲!!」

 凶悪な魔法を放った。
 タメ時間最短の、回避を許容しない暴力、

 ゆえに『確実に当てた』――
 と思った、
 が、



「背後は死角じゃないんだぞ、っと」



 カドヒトは、異次元砲が後頭部に直撃するスレスレのところ、
 軽やかな下降型の緊急回避で、亜空間へのダイブを決め込むと、
 そのまま、うたうように、無数の次元を跳躍し、
 山ほどの絶技と奇策を組み合わせながら、
 鬼速の寄せを見せると、


「――閃拳――」


 バンスールの正面から、
 絢爛(けんらん)かつ超俗的な閃拳を叩き込んだ。
 すべての常軌を逸していく飛湍(ひたん)。
 まるで流星をテーマにした吟詠(ぎんえい)。

「ぐっ」

 激流ではない。
 暴風たりえない。
 ゆえに、たいしてダメージは通っていない。
 重量を感じる程度の小唄。


 しかしゼロではない。


「信じられん動きをするな……しかし、意味がないぞ。存在値170の攻撃など、たかが知れている。何百発ぶちこまれようと――」

「何百発?」

 カドヒトは、バンスールの言葉を途中で遮って、

「バカか、お前。存在値の差をちゃんと計算しろ。何百発程度でどうこうできる差じゃないだろ。現状における俺の拳で、お前を削り切ろうと思ったら、最低でも、『10億』発は必要だ」

「……その事実を理解していながら、なぜ、抗う?」

「イカれてんのか、お前。理解しているから、抗っているんだろうが。『無限を必要とする』と言われれば、さすがの俺でも『軽く引く』が『雑魚に10億を打ち込む程度の作業』は、俺にとって『昼バラの罰ゲームレベル』でしかない」

「先ほどの一発だけでも、狂気の集中力を必要とする一手! それを、数億の単位で行うなど――」

「できるわけがないって? アホぬかせ」

 カドヒトは鼻で笑って、

「ヌルすぎて、逆にしんどいレベルだよ、この程度の作業ゲーなんざ」

 そう言いながら、
 カドヒトは、
 丁寧にオーラを練り上げて、

「――『十閃楽団』――」

 華麗なる10連コンボを叩き込む。
 億を超えて繰り返してきた、流れるような豪速の連撃。
 狂気のコンボ型グリムアーツ。

「ぐっ、ぶぐ、ぐひっ、がは――」

 その一発一発は、バンスールからすれば、
 さほど大きなダメージにはなっていない。
 HPゲージは、ちょっとずつしか減っていない。

 しかし、減ってはいる。
 確実に。

 十連コンボが終わったところで、
 カドヒトは、

「はい、これで11発。残り999999989発。はっ、ヌルいな。課せられたノルマが、その100倍でも、まったく足りないレベルだ」

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