センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

41話 すべてが空になる。

 41話 すべてが空になる。

「存在在170程度の雑魚が、存在値3000の私に敵うとでも?」

 そう言いながら、
 バンプティは、ナメたムーブで、
 カドヒトの攻撃を払おうとした。

 ――けれど、

「ぶっ!」

 カドヒトは、バンプティの雑な動きを、余裕で見極めると、
 そのまま懐に入って、顔面に拳をたたきつけた。

 続けて、体を回転させてカカトをいれる。

「ぐふ!」

 存在値の差が大きいので、ダメージは微妙。
 軽いジャブ程度の痛みしか与えられていない。
 だから、バンプティは、カドヒトの攻撃に、のけぞることもなく、
 ただ、軽く声をあげる程度ですんでいる。

 ――痛みはない。
 ただ『現状の大問題』はそこではない。
 カドヒトの拳が『届いている』という『事実そのもの』が何よりの問題なのだ。

 ゆえに、バンプティは、キっと強い視線でカドヒトをにらみつけ、

「な、なぜ、届く! どういうことだ! 先ほどまでの貴様であれば、間違いなく払えていたはず。なのに……っ」

 少し距離をとりながら、
 警戒心を強化しつつ、

「先ほどまでとは動きが段違いではないか……何をした? 絶死でも積んだのか?」

「だったら、真っ赤な光に包まれているはずだろ。頭のイカれ方がハンパない俺でも、さすがに、現状で、絶死にフェイクを仕込むようなマネはしねぇよ。あまりに意味がねぇ」

「……で、では、なぜ? いったい、何を……」

「実力の一端を見せてやっただけさ。言っておくが、まだまだ、まったくもって全力じゃないぜ。お前程度の雑魚に本気を出すほど、俺は大人気なく無いんでね」

 涼やかな表情でそういうカドヒト。

「……」

 バンプティは、数秒だけ沈黙してから、

「……ふ、ふん。いいハッタリじゃな。そのまっすぐな顔つきで言われると『まさか本当なのか』と、ほんの少しだけ疑ってしまった。――が、もちろん、そんなはずはない。そこまでの高みに至った人間など存在するはずがない」

 『自分の中の現実』に寄り添うと、

「どんな奇術か知らんが、しかし、まあ、その最後まであきらめない姿勢に敬意を表し……」

 心を整えて、
 全身をオーラと魔力で充満させる。

「……見せよう。私の全力を。センエースをも超えてしまった、真なる最強の姿を」

「真なる最強ねぇ……」

 鼻で笑いながら、
 カドヒトは、ゆったりと武を構えて、

「そんだけの大口をたたいたんだ。ちゃんと、俺を置き去りにしてくれよ。期待しているぜ」

 そう言うと、
 カドヒトは、空間を駆け抜けた。
 バンプティの死角に潜みながら、
 バンプティの意識を操作しながら、
 変幻自在に迷いなく、
 驚くほどまっすぐな円を描く。

 軽やかに舞う、
 鮮やかな閃光。

 カドヒトは、バンプティとの闘いにおいて、
 これまでの自分に課していた『いくつかのハンデ』をシカトした。

 存在値はそのままに、
 しかし、戦闘力の方は、少しだけ自由にした。

 その結果、
 バンプティは、

(……な、なんじゃ、この圧力は……)

 押し込まれる。
 バンプティが見せる『すべての武』が、
 カドヒトの前では、ただの『空(くう)』になる。

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