センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
35話 バンプティを縛っていた何か。
35話 バンプティを縛っていた何か。
「虫ケラのささやきごときで、私が懐柔されるとでも? ナメるのもたいがいに――」
『ナメてなどいない。お前を縛っているカラを砕いてやると言っているだけだ。ほら、聞こえないか? お前を縛っていた全てが砕けていく……その音が聞こえないか?』
「……カラが……くだける……音……」
仮バグの言葉で、
驚くほど、奇怪なほど、
バンプティの心が、
グニャリと、ゆがんでいく。
何かが壊れていく感覚。
バンプティは、生まれた時からずっと、
自分を縛っている『何か』を感じていた。
仮バグに犯されたことで、
その『何か』にヒビが入った音が、確かに聞こえた。
だから……
『バンプティ、お前の可能性は大きい。さあ、無意味な抵抗はやめて、オレを望め』
可能性の扉が見えた。
頭の中を、無数の光が飛び交う。
見えてしまった。
大いなる未来。
絶望を切り裂く最果ての姿。
「うぅううううっっ!!」
猛烈な激痛と不快感の奥に、
バンプティは、『途方もない未来』を見てしまった。
ゆえに、
(……大きな……未来……)
黒いけれど、確かに輝く明日。
壊れて、歪んで、腐って、
溶けて、弾けて、
そして、また、結(むす)んで、
(いけるのか……この私が……この私ごときが……あの遥かなる先へ……ああ、狂気の可能性が見える……私にも……私なんかの目にも……この上なく尊き……光の最果てが……)
『砕いてやるよ、その鎖。お前の可能性を邪魔していたノイズを、オレが調律してやる。今日は、お前の誕生日。さあ、本当のお前をはじめよう』
心がズレていく。
ズレて、歪んで、
けれど、
その分だけ、
――整っていく。
「がぁあああああああああっっ!!」
激しい叫びは、
途中で、
「――ぁ――」
プツンと、糸が切れたようにかすれて消えた。
シンと静かに、
無音だけが空間を支配する。
呼吸の音すら聞こえない。
ただただ静かな世界。
そんな静寂の片隅で、
――無を見つめながら、
バンプティは、天を仰いでいる。
ここではない、どこか遠くを見つめているバンプティ。
無音の5秒間が経過した時、
バンプティは、その視線をカドヒトに向けて、
「……バンプティという非常に優れた肉……それが、『オレ』の魂魄と融合したことで、きわめて優秀な異形となった……解き放たれた気分だよ。これは『私』が求めていた力。この概念は、最強を名乗りえる器……『私』と『オレ』が合わさったことで完成した器。これがバンプティだ。本物の……バンプティ……」
『バンプティ(仮バグ)』の言葉を受けて、
『カドヒト』は、
軽いタメ息をつきつつ、
「精神支配系の寄生虫……バグはその手の技を使わなかったが、虫種には珍しくないタイプだから、さほど驚きはしない……が……しかし、バンプティが、虫の支配力に負けたってのには、多少驚かされたな……普通に打ち勝てると思ったが……んー」
などと言いつつ、軽く首をまわして、
「まあ、でも、まだ完全に負けたワケではなさそうだ。感じるよ。バンプティの叫び。抗おうとしているのを、確かに感じる。負けるものかと、叫びながら、しかし、心の厄介な部分を持っていかれたことを悔やんでいる」
「それは、貴様の妄想だ。『私』は『オレ』と一つになることを望み、重なり合った。それだけの話だ」
「虫ケラのささやきごときで、私が懐柔されるとでも? ナメるのもたいがいに――」
『ナメてなどいない。お前を縛っているカラを砕いてやると言っているだけだ。ほら、聞こえないか? お前を縛っていた全てが砕けていく……その音が聞こえないか?』
「……カラが……くだける……音……」
仮バグの言葉で、
驚くほど、奇怪なほど、
バンプティの心が、
グニャリと、ゆがんでいく。
何かが壊れていく感覚。
バンプティは、生まれた時からずっと、
自分を縛っている『何か』を感じていた。
仮バグに犯されたことで、
その『何か』にヒビが入った音が、確かに聞こえた。
だから……
『バンプティ、お前の可能性は大きい。さあ、無意味な抵抗はやめて、オレを望め』
可能性の扉が見えた。
頭の中を、無数の光が飛び交う。
見えてしまった。
大いなる未来。
絶望を切り裂く最果ての姿。
「うぅううううっっ!!」
猛烈な激痛と不快感の奥に、
バンプティは、『途方もない未来』を見てしまった。
ゆえに、
(……大きな……未来……)
黒いけれど、確かに輝く明日。
壊れて、歪んで、腐って、
溶けて、弾けて、
そして、また、結(むす)んで、
(いけるのか……この私が……この私ごときが……あの遥かなる先へ……ああ、狂気の可能性が見える……私にも……私なんかの目にも……この上なく尊き……光の最果てが……)
『砕いてやるよ、その鎖。お前の可能性を邪魔していたノイズを、オレが調律してやる。今日は、お前の誕生日。さあ、本当のお前をはじめよう』
心がズレていく。
ズレて、歪んで、
けれど、
その分だけ、
――整っていく。
「がぁあああああああああっっ!!」
激しい叫びは、
途中で、
「――ぁ――」
プツンと、糸が切れたようにかすれて消えた。
シンと静かに、
無音だけが空間を支配する。
呼吸の音すら聞こえない。
ただただ静かな世界。
そんな静寂の片隅で、
――無を見つめながら、
バンプティは、天を仰いでいる。
ここではない、どこか遠くを見つめているバンプティ。
無音の5秒間が経過した時、
バンプティは、その視線をカドヒトに向けて、
「……バンプティという非常に優れた肉……それが、『オレ』の魂魄と融合したことで、きわめて優秀な異形となった……解き放たれた気分だよ。これは『私』が求めていた力。この概念は、最強を名乗りえる器……『私』と『オレ』が合わさったことで完成した器。これがバンプティだ。本物の……バンプティ……」
『バンプティ(仮バグ)』の言葉を受けて、
『カドヒト』は、
軽いタメ息をつきつつ、
「精神支配系の寄生虫……バグはその手の技を使わなかったが、虫種には珍しくないタイプだから、さほど驚きはしない……が……しかし、バンプティが、虫の支配力に負けたってのには、多少驚かされたな……普通に打ち勝てると思ったが……んー」
などと言いつつ、軽く首をまわして、
「まあ、でも、まだ完全に負けたワケではなさそうだ。感じるよ。バンプティの叫び。抗おうとしているのを、確かに感じる。負けるものかと、叫びながら、しかし、心の厄介な部分を持っていかれたことを悔やんでいる」
「それは、貴様の妄想だ。『私』は『オレ』と一つになることを望み、重なり合った。それだけの話だ」
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