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27話 ゴキブリとコオロギの違い。

 27話 ゴキブリとコオロギの違い。

「……ぉいおい、なんか、あそこ裂けてんだけど……バンプティ、お前、何をした? 『とっておきの必殺技』的なやつか?」

「わ、私は何もしておらん……ぬしがやったのではないのか?」

「いや、俺だって、なにも……」

 と、二人が互いに疑問符を抱いていると、
 その亀裂の向こう側から、


「ギギ……」


 羽の生えたサソリみたいなのが出てきた。
 サイズはバレーボールくらいで、虫としては大きい部類。

 その虫の形状を見て、
 カドヒトは、

「なんだ、あの虫……ちょっと『バグ』に似ているな……まあ、サイズが全然違うが」

 ボソっと、そうつぶやく。

 それを聞いて、バンプティが、ブワっと冷や汗を流し、

「バグ? それは、まさか、聖典にも載(の)っている、主が倒したというバケモノのことか?」

「ああ……だいぶ昔の話だから、そんなに細かいところまでシッカリと覚えているワケじゃないけど……確か、あんな感じだった……気がする……あ、でも、よく見たらフォルムが、けっこう違うな。バグは、もっと気色悪い感じでゴチャゴチャしていた気がするなぁ……なんというか、これは……そう、あれだ……ゴキブリとコオロギくらい違う感じだな」

 その発言を聞いて、バンプティは、

(主と同じ時代を生きていたというのが事実なら、カドヒトが『かつて世界を食い散らかしたというバグ』を、その目で見ていたとしてもおかしくはない……)

 そう理解すると同時、

(カドヒトの発言から鑑みるに、あれが『バグそのもの』である可能性は低そうではある。しかし、似ているという時点で、すでに大問題。……もし……もし、あの虫が、例の『バグ』の生き残り……その『亜種的な何か』だとしたら……)

 冷や汗がとまらない。
 聖典に書かれていることが事実であるなら、
 バグという地獄は、バンプティごときに対処できる災害ではない。

(たまたま外見が似ているだけの虫型モンスターでしかない……という可能性もあるにはあるが……楽観視はすべきじゃない)

 楽観視して、結果、世界が終わりました。
 こんな結果を出すことだけは絶対に避けなくてはいけない。

 バンプティは、万が一のことを考え、
 ゼノリカに救援要請を出そうとしたが、

「っ……ジャミングっ?! あの虫……小賢しいマネを!!」

 通信系の魔法は、のきなみ領域魔法で妨害されており、
 おまけに、

「空間魔法の解除が出来ん……じ、次元ロックまで……」

 さらに、

(……フェイクオーラも秀逸……私のフォースアイでは見通せない……フェイクオーラのランクが高いだけか、それとも、純粋に見通せないほど存在値が高いのか……)

 ・バグ似。
 ・ジャミング。
 ・フェイクオーラ。
 この三つの現実を正確に理解したことで、
 バンプティの中で、
 警戒度が一気に跳ね上がった。

 危機的状況下でこそ、たぎる脳みそ。
 『世界を支える柱』としての覚悟は伊達じゃない。

 栄えあるゼノリカの天上、
 九華十傑の第十席序列二位というポジションは、
 権威のシンボルなどではなく、
 世界を守る剣の一本であるという証。

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