センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
35話 地図が示す場所に向かうザコー。
35話 地図が示す場所に向かうザコー。
「力をつける前に、どうにかして殺しておかなければいけなかった……なのに……ぐっ」
アギトは、グっと奥歯をかみしめ、
父であるテラの顔を思い出し、
「くだらない見栄を張っている場合ではないのに……いや、ロコに対するアレは、見栄ではなく『情』か。……なんにせよ、父は、現状が理解できていない。いや、理解はできているのだ。父は『愚か』だが『バカ』ではない」
『人としての愚かさ』と『頭の悪さ』は、
字面上は、同じ概念に見えるが、
現実に当てはめた場合、器が異なる。
相対性理論を唱えられるほどの頭脳を持つ者でも浮気はする。
賢さで愚かさは殺せない。
「父は、理解していながら、ロコを放置している。その理由は単純明快。甘さの奥にある『自身にたいする絶対的な自信』がゆえ。過剰な自信のせいで、脅威に対しても品格を持とうとしてしまう。愚かな話だ。この愚かさは、人の弱さの象徴だ」
ボロクソに父をけなしているが、
しかし、アギトにもそういう面はある。
誰にだってある、人間の奇妙さ。
「900億の損失は……私が痛手を被るという以上に、あいつらの力が増すというのが問題なのだ。金は実弾だ。金だけあっても意味はないが、使い方を知っている者の手に渡ると、金はとたんに、最大の凶器となる」
ギリギリと奥歯を強くかみしめ、
「……くそったれが……」
★
アギトのもとを去ったザコーは、
その足で、地図が示す場所へと向かった。
その場所は、エリアBのはずれ。
高い丘に囲まれた荒野。
赤茶色の土が広がっていて、
ところどころ、申し訳程度に緑が生えている場所。
「……何もないな……」
『地図を頼りにたどり着いた』――はいいものの、
しかし、特に何も見当たらない。
「かつがれたか? ……いや、でも、そんな感じでもなかったし……」
などと思っていると、
そこで、
背後から、
「悪鬼羅刹は表裏一体」
声が聞こえて、
ザコーは振り返った。
(?! な、なんだ? 人が近づく気配など、まったくなかったぞ……っ)
ザコーは、裏社会で生きるカリスマ。
当たり前の毎日がユニークな戦場という悪の修羅。
ゆえに、どんな時でも警戒心は怠らない。
――だが、そんなザコーの警戒網に、
『ザコーの背後をとった彼』は一ミリもひっかからなかった。
「俺は独り、無限地獄に立ち尽くす」
現れたのは、一人の男。
その男の顔には見覚えがあった。
(……あいつ……確か、試験の時に見た顔……)
二人組で試験に挑戦していた受験生。
名前はルースだが、ザコーは、彼の名など知らない。
ただ、試験で互いをチラ見しただけの関係。
なんのつながりもない相手。
『相手にするまでもないカス』と決めつけて、
だから、当たり前のように見過ごした弱者。
(どういう……まさか、試験の時から、俺をつけていた? いや、さすがに、それで気づかないわけ……)
ザコーが混乱している間も、
ルースは、奇妙な詠唱を続けている。
「どこまでも光を求めてさまよう旅人。ここは幾億(いくおく)の夜を越えて辿り着いた場所。さあ、詠おう。詠おうじゃないか。喝采はいらない。賛美も不要。俺は、ただ、絶望を裂く一振りの剣であればいい」
「力をつける前に、どうにかして殺しておかなければいけなかった……なのに……ぐっ」
アギトは、グっと奥歯をかみしめ、
父であるテラの顔を思い出し、
「くだらない見栄を張っている場合ではないのに……いや、ロコに対するアレは、見栄ではなく『情』か。……なんにせよ、父は、現状が理解できていない。いや、理解はできているのだ。父は『愚か』だが『バカ』ではない」
『人としての愚かさ』と『頭の悪さ』は、
字面上は、同じ概念に見えるが、
現実に当てはめた場合、器が異なる。
相対性理論を唱えられるほどの頭脳を持つ者でも浮気はする。
賢さで愚かさは殺せない。
「父は、理解していながら、ロコを放置している。その理由は単純明快。甘さの奥にある『自身にたいする絶対的な自信』がゆえ。過剰な自信のせいで、脅威に対しても品格を持とうとしてしまう。愚かな話だ。この愚かさは、人の弱さの象徴だ」
ボロクソに父をけなしているが、
しかし、アギトにもそういう面はある。
誰にだってある、人間の奇妙さ。
「900億の損失は……私が痛手を被るという以上に、あいつらの力が増すというのが問題なのだ。金は実弾だ。金だけあっても意味はないが、使い方を知っている者の手に渡ると、金はとたんに、最大の凶器となる」
ギリギリと奥歯を強くかみしめ、
「……くそったれが……」
★
アギトのもとを去ったザコーは、
その足で、地図が示す場所へと向かった。
その場所は、エリアBのはずれ。
高い丘に囲まれた荒野。
赤茶色の土が広がっていて、
ところどころ、申し訳程度に緑が生えている場所。
「……何もないな……」
『地図を頼りにたどり着いた』――はいいものの、
しかし、特に何も見当たらない。
「かつがれたか? ……いや、でも、そんな感じでもなかったし……」
などと思っていると、
そこで、
背後から、
「悪鬼羅刹は表裏一体」
声が聞こえて、
ザコーは振り返った。
(?! な、なんだ? 人が近づく気配など、まったくなかったぞ……っ)
ザコーは、裏社会で生きるカリスマ。
当たり前の毎日がユニークな戦場という悪の修羅。
ゆえに、どんな時でも警戒心は怠らない。
――だが、そんなザコーの警戒網に、
『ザコーの背後をとった彼』は一ミリもひっかからなかった。
「俺は独り、無限地獄に立ち尽くす」
現れたのは、一人の男。
その男の顔には見覚えがあった。
(……あいつ……確か、試験の時に見た顔……)
二人組で試験に挑戦していた受験生。
名前はルースだが、ザコーは、彼の名など知らない。
ただ、試験で互いをチラ見しただけの関係。
なんのつながりもない相手。
『相手にするまでもないカス』と決めつけて、
だから、当たり前のように見過ごした弱者。
(どういう……まさか、試験の時から、俺をつけていた? いや、さすがに、それで気づかないわけ……)
ザコーが混乱している間も、
ルースは、奇妙な詠唱を続けている。
「どこまでも光を求めてさまよう旅人。ここは幾億(いくおく)の夜を越えて辿り着いた場所。さあ、詠おう。詠おうじゃないか。喝采はいらない。賛美も不要。俺は、ただ、絶望を裂く一振りの剣であればいい」
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