センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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23話 契約だ、イグ。

 23話 契約だ、イグ。

(俺は絶対にお前をあきらめない。俺の『最終目的』を達成するためには、お前という超人が絶対に不可欠)

 心の中でそう言って、
 白いナイフを取り出す。

 そのナイフの柄をグっと掴んだザコーは、

「契約だ、イグ……俺の『ほとんど』をくれてやる……だから……」

 ズプリと、自分の手首をナイフで切った。
 すると、ドプっと、血があふれる。
 その血は、一滴たりとも地面に落ちることなく、
 すべて、あますことなく、白いナイフに集まっていく。

「……ヤマトの足を奪ってくれ……あと、ついでに、ロコも殺しておいてくれ」

 ザコーの血で真っ赤に染まったところで、
 白かったナイフは、鈍く、鮮血色のオーラをはなつ。

 ドクンと、ザコーの心臓が強く鼓動して、
 直後、ザコーの全身がビクンビクンと痙攣する。

 その痙攣はとどまることを知らず、
 ついには、ブルブルブルッとヤバい感じで体が震えだした。

 10秒ほどの振動。
 その直後、ピタっと体が止まって、
 『ザコー(イグ)』は、ゆっくりと口を開く。

「――要請内容を確認。全宮ロコを抹殺し、ヤマトの足を奪い去ること。対価は、貴様が有する命の権利、その大半。……了承。契約成立。……叶えよう、貴様の願い」

 そう言いながら、
 『イグ』は、ロコに視線を向けて、
 右手に魔力を集めながら、ゆっくりと、歩を進めていく。

 ほとばしる殺気。
 迷いなく殺す気まんまん。

 その波動を受けて、
 ヤマトが、

「翡翠鬼刃(ひすいきば)ランク23」

 わずかな猶予も遊びもない、
 最速・最善の一手を放った。

 すさまじいオーラの刃。
 圧倒的な闘気の塊。

 けれど、

「とてつもない才能だ……それだけの力を持っていながら、いまだ発展途上というのが、何より恐ろしい。さすがは、完全院リライトに畏れを抱かせた鬼才といったところか」

 イグは、ヤマトの最善を片手でかき消して、
 一瞬のうちに距離を詰め、

「ま、とはいえ、もちろん、私の敵ではないが」

 シュンと、軽やかに片手を振ると、
 ヤマトの視界がグラっと揺れた。

「……っっ!!」

 両の足という支えから切り離されて、ドサっと地面に落ちるヤマトの上半身。
 遅れて下半身も、姿勢制御装置を失っているためバランスをたもてなくなって、
 糸がきれた人形みたいに、バタリと横にたおれた。

「っ……ぅうっ……っ」

「両足を切断されていながら、うめき声一つですませるとは……胆力も素晴らしい」

「……褒められて、うれしいねぇ……」

 言いながら、ヤマトは、即座に切断された足を掴み、
 どうにかくっつけようと、回復魔力をぶちこむが、

(……か、回復速度が異常に遅い……というより、切断面が回復魔法を拒絶している……)

 『高位の呪(じゅ)をくらってしまったのだ』と即座に理解。
 こうなると『相手の存在値を超える魔力』がない限り、回復も再生も難しい。

(……コスモゾーン・レリックの存在値は、さすがに私でも届かない……足は諦めるしかないかな……)

 そこで、ヤマトは、激痛に耐えながら、
 気力と精神力を振り絞って、

「ははは……いやぁ、まさか、私を取り戻すっていうそれだけのために、イグをつかうとは思っていなかったなぁ……愛されすぎちゃっていて、困るぅ」

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