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128話 ロコとの対話。

 128話 ロコとの対話。

「なんとも不思議だねぇ……特に美形でも不細工でもない、ちょっと目つきが悪いだけの凡人顔なのに……なぜか、妙に引き付けられる……」

 などと言いながら、
 ゆっくりと歩を進めて、
 気絶しているロコの元まで歩く。
 
 そして、足を伸ばせば届くほどの距離になったところで、


「ゲンと比べると、こっちは惚れ惚れするほど美形だねぇ……」


 ロコの顔をのぞきこみ、
 そんなことをつぶやくヤマトは、
 そこで、ロコの横に、ゲンをおろし、
 アイテムボックスからスマホを取り出して、
 カメラ機能にしてパシャリと自撮り。

 何枚か撮ってから、自分の写真に目を通す。

「まあ、でも、美形力でいうと、私も負けていないねぇ……」

 矯(た)めつ眇(すが)めつ確認しつつ、

「7歳のころから今日まで、ずっと男をやってきたから、少し戸惑うところもあるけれど……まあ、これはこれでアリかな……今後はゲンと深く絡んでいかなければいけない以上、こっちの方が確かに面白そうだからねぇ」

 などと言いながら、ヤマトは、
 つま先で、コンコンと、ロコの頬をノックする。

 一回二回では起きなかったが、
 五度ほどノックしたところで、

「ん……ん~」

 気がついたようで、
 頭を振りながら、顔をあげ、

「……ん……?」

 かすむ目をゆっくりと開く。
 まだ、すこし朦朧としているが、

「……生きて……いる……?」

 気絶する前の自分の状況を正確に思い出し、
 だからこそ疑問符を抱く。

 ゴシゴシっと何度か手で目をこすってから、
 周囲に視線をさまよわせる。

 まず、目に入ってきたのは、自分の横で気絶しているゲン。
 ロコは、ゲンの口元に手をあてて、

(こっちも生きている……)

 それを確認すると同時、
 すぐ近くに立っているヤマトの姿を確認し、

(……え? あれ、ヤマト? 顔は似ているけど……性別が……)

「おはようございまぁす、ロコ様ぁ」

「……ぉ、おはよう」

 挨拶をかわしつつ、
 ロコはスっと立ち上がる。

 意識はまだ少しボンヤリとしているが、
 自分を殺す気満々の相手を前にして、
 いつまでもノンビリと座ってはいられない。

「あんたは……ヤマト?」

「ええ、もちろぉん」

「性別が変わっている気がするのだけど……気のせい?」

「いえ、気のせいじゃないですよぉ。ついさっき、呪いが解けて、女に戻りましたぁ」

「……呪い……?」

「ええ。私は女として生まれたのですが、とある呪いをかけられて、男の姿になっていたのですよぉ。正直、男の姿の方が色々と楽なので気に入っていたのですが、うっかり解けてしまいましてねぇ」

「なに、うっかりって……呪いというのは、うっかりで解けるようなものじゃないと思うのだけれど?」

「普通はそうでしょうねぇ。けど、私は普通ではないものでぇ」

「まあ、あんたが普通じゃないというのは、こちらもキッチリと認識しているところだけれど……」

 そこで、ロコは、
 ヤマトとの『建設的な会話』は『不可能である』という事実を再認識し、

「……ところで、これ、どういう状況? どうやら、あたしは気絶したようだけれど、……それなのに、なぜ、あたしを殺さなかったの?」

 問われたヤマトは、
 気絶したまま転がっているゲンに視線を送りつつ、

「あなたを気絶させたあとで、そこの少年と、再度、戦いましてねぇ。その時、賭けをしたのですよぉ」

「どんな?」

「具体的に説明すると長くなるので、結果だけお伝えしまぁす。今後、私は、あなたの勢力下の一人となりましたので、そのつもりでぇ」


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