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122話 壊れ方が加速するヤマト。

 122話 壊れ方が加速するヤマト。

 ヤマトは、躊躇なく、

「……『自爆ランク30』……」

 そうつぶやきながら、魔カードを破り捨てた。
 その瞬間、ヤマトのコアオーラが猛烈に膨れ上がっていく。

 ランク30という、超々々々高位の魔カードを執行。
 10年以上の時をかけて、丹念に磨き上げられた魔力の結晶。

 もはや、誰にも止められない。
 この狂気に介入できる力はこの世に存在しない。
 たとえコスモゾーン・レリックですら抗いきれない最果ての爆発がはじまる。

 絶対不可避の自爆。
 それを、いっさいの躊躇なく執行した異常。

 なんの迷いもないヤマトのイカれた行動に対し、
 ナイアは、一度、

「……うっざ……」

 っと、面倒くさそうに舌を打ってから、

 ――パチンッッ

 と、大きな音で指を鳴らした。

 すると、
 膨れ上がっていたヤマトのオーラが急速に縮んでいった。

 自爆を阻止されたヤマトは、困り顔で、

「……えぇ、うそぉん……ランク30の魔カードだよぉ? それを……強制解除するなんてぇ……えぇ……」

 執行された魔カードに介入する術はいくつかある。
 が、どの手段であれ『遥かなる高み』からでなければ介入不可能。

 つまりは……

「なんというか……ほんと、すごいねぇ、君。もう、なに一つ理解できないやぁ……はははぁ」

「おい、罪帝ヒミコ。いったん、話を聞け。自分勝手に話を進めんな。現状は俺の時間だ。お前のオンステージはすでに終わった」

 心底ウザそうにそう声をかけてきたナイアに、
 しかし、ヤマトは、ラリったような顔で、

「罪帝ヒミコなんて人間は、もう、この世に存在しないよぉ。私はゴキのヤマト。ゴキのヤマトとして生きて、ゴキのヤマトとして死ぬ。そう決めて生きてきた。その決断は、選択肢を奪われたゆえの妥協ではなく、ゆるぎない私自身の意志」





『あぁ……ヒミコ様……どうして……なぜ……どうして……』
『なぜ? 簡単な話だよぉ。この選択が一番いいと思ったからだねぇ』
『……我々など、見捨ててしまえばよかったのです……な、なぜ、我々ごときを守るために……ヒミコ様が……こんな目に……』
『それは違うねぇ。精一杯尽くしてくれた君たちに、多少の感謝をしていなくもないけど、私という人間は、そういう感情を軸にして生きていないからねぇ』
『……ヒミコ様……』
『私の地位は剥奪されたも同然だから、君たちの再就職に便宜をはかることはできないけど、君たちは実力があるから、職には困らないよねぇ? むしろ、厄介者の私から離れることが出来るワケだから、いろいろとプラスだよねぇ、これまで、罪帝ヒミコの子守という面倒極まりないお仕事、ご苦労様ぁ。もう君たちは自由だよぉ』
『われわれは……ヒミコ様の……護衛です。それ以外の何かになる気など――』
『もう私に護衛は必要ないよぉ。ぶっちゃけ、もともと必要ないしねぇ。あと、私はもう罪帝ヒミコじゃない。そういう看板は、リライト先生にぜんぶ消されちゃったからぁ』
『……ぁ、あのビビリクソ野郎……自分がヒミコ様より劣っていることに気づいたからって……こんな、ふざけたマネしやがって……こ、殺してやる……』
『むりだからやめときなよぉ。ていうか、そんなに怒ることでもないよねぇ。むしろ、私はリライト先生に感謝しているよぉ。罪帝の看板は私にとって鬱陶しい荷物でしかなかったからねぇ。というわけで、私はこれから自由に生きるよぉ。だからルスたちも、これからは自由に生きたらいいと思うよぉ。じゃあねぇ』





「――ゴキのヤマト。それが私の誇り。自分で選んだ道。そのプライドだけは、絶対に、誰にも奪わせない」


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