センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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114話 理由。

 114話 理由。

「正直な話をしようかぁ……私は『最初の美学』を曲げたくないんだよぉ。全宮ロコ以外は殺したくないんだぁ……けど、このままだと、君を殺さないといけなくなるよねぇ。私の気まぐれに、私の美学が犯される……イヤなんだよぇ、それは……」

 自分で勝手にやっておきながら、
 心底からの文句をたれてくる、
 完全に頭がおかしいヤマトに、
 ゲンは、

「……ゲン……」

 ぼろぼろで、
 血に濡れて、
 それでも、

「――ワンダフォ――」

 ヤマトに、拳をつきつけた。
 アリア・ギアスを込めた正拳突き。

 二歳のころからずっと、必死になって磨き上げてきた拳。
 その拳を受け止めると、
 ヤマトは、

「この状況で、その拳を出せたこと……それだけは認めてあげるよぉ」

 本音を口にしてから、

「なぜ、そこまでできるのかなぁ? 全宮ロコに……そこまでの魅力はないと思うんだけどねぇ。確かに、その子は、可愛いし、思想もなかなかエッジがきいていて面白い……けど、そんなものじゃ、そこまでする理由にはならないはずだよねぇ……」

 言いながら、ヤマトは天を仰いで思案して、

「もしかして、君は、全宮ロコのことが好きなのかなぁ?」

 問われて、ゲンは、

「……好きか嫌いかで言えば……たぶん、嫌いだろうな……この女、ワケわかんないし……」

「ふむ……では、なぜ、まだ彼女の盾になろうとするのかなぁ?」

「……何度も、何度も……同じことを言わせるな。その理由は、俺の方が教えてほしいくらいで――」

「理由がないのであれば、私は、君とのおしゃべりを中断して、即座に全宮ロコを殺すからねぇ」

「……」

「はは、大変だねぇ。こうなったら、本当に理由が分からなかったとしても、考えざるをえない。さあ、答えてみようかぁ。なぜ、君は、まだ私の前に立ちふさがっているのかなぁ?」

「……」

 ゲンは、痛みの中で、
 必死になって考えてみた。

(……ほんとにわかんねぇんだよなぁ……)

 心の中でつぶやきつつも、
 全力で頭をまわし、

(俺は……どうして……)

 数秒を費やして、
 けど、答えは出なくて、

 だから、

「タイムアップだねぇ。全宮ロコを殺すよぉ」

 そう言って、ヤマトは、ゲンの横を通り抜けて、
 気絶しているロコに近づく。

 その歩みを、

「待て」

 ゲンが、ヤマトの腕をつかむ形で止める。

「待ったらどうなるのかなぁ?」

 その問いに、ゲンは答えられない。
 また数秒の沈黙。

 いい加減、焦れたヤマトが、

「魔矢ランク5」

 ロコに向かって、魔法の矢を放った。

 詠唱中から動き出していたゲンが、
 どうにか、矢がロコに当たる直前に、自身の体で受け止める。


「ぐぁああ!!」


 腕にぶっささり、血があふれた。
 オーラで止血するが、止めきれず、
 ドクドクとあふれる。

「うぅう……ぁあ……」

 その様子を見て、
 ヤマトが、

「君の姿勢からは『狂気的な情動』を感じるのだけど……君はその情動を言葉にする術を持ち合わせていない……非常に面白いともいえるのだけれど、理解できなくてモヤモヤもする」

 そう言いながら、ヤマトは、ゲンに近づいて、

「まあ、君が異質だということはよくわかったよぉ。私と同じ側の『壊れた人間』だねぇ」

 そう言いながら、

「けど、もう、堂々巡りになりそうだし……そろそろ終わらせることにするよぉ」


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