センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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95話 重なり合って、自由になる。

 95話 重なり合って、自由になる。

「いいですよねぇ、こういう時間……上質な喫茶店で過ごす時間に似ているような気がしますぅ。私は、こういう時間が大好きでねぇ」

 ラリった感じで笑ってから、
 天を仰ぎ、

「優れた命と優れた命が混じりあって、きしみ合って、その奥に光る何かがまたたく……」

 ぶつぶつと、

「そうして、重なり合って……自由になる……」

 つぶやいてから、
 ソウルさんたちに視線を向けて、

「なんてことになったらぁ、すごく美しい気がしません?」

「よくわからんな」

「でしょうねぇ。実際のところ、私も自分が何を言っているのかわかっていませんのでぇ、てへっ」

 舌をペロっと出す仕草。
 内容が錯綜しているセリフ。

 すべてが歪で、奇妙で……

「本当に気持ちの悪いガキだ……」

 ソウルさんは、一度『素直な言葉』を口にしてから、

「……ウチの子も、たいがい、イカれているが……お前を見ていると、まだまともな方だと安心できるよ」

 そう言ってから、息を吐く。
 吐き切るまで。
 深く、深く、息を吐く。
 そして、スゥと短く息を吸って、
 自分を整えて、


「勝てる気はしない……たった一回の攻防だけでも理解できる。お前は私たちよりも遥かに高いところにいる。その年で、それだけの力を持つ者は……五大家の人間でも、なかなかいない。お前は、まさしく稀代の天才だ」


 よどみのない言葉。
 嫉妬とか、落胆とか、恐怖とか、
 そういう雑味のある感情を排除した言葉。

 ソウルさんは、自分の中に深く潜って、
 ヤマトをシルエットとしてとらえて、

「だからこそ分かり得る……お前と武を交えれば、私が『たどり着いた場所』がどこなのか、明確にわかるだろう。お前とぶつかり合った果てに……私が積んできたモノの価値が……真価が……わかる……ような気がしないでもない」

 言葉とともに、
 ソウルさんは踏み込んだ。

 剣がきらめく。
 豪速。
 世界に残像を残す瞬歩。

 体すべてが一本の刃になる境地。

 その、魂こもった斬撃を、

「ご自身の真価……どうでしたぁ?」

 ヤマトは、鮮やかに受け流してみせた。
 斬撃に対して、
 その細い指先を『しなり』と艶やかに合わせて、
 コンと軽くノック。
 その結果、ソウルさんの剣はキィンと、よく通る音を奏でて折れた。

 その流れのまま、
 ヤマトは、体躯を回転させて、風を切りながら、
 ヒジカとオキの剣に優しくノックをして、
 優雅に、パキリとへし折ってみせる。

 直後、静寂が場を制圧した。
 自身の折れた剣を見つめる三人。

 そんな彼らに微笑みを向けるヤマト。

 きわめて静かな状況。

 ソウルさんは、

「……ふぅ」

 ため息をついてから、
 折れた剣を捨てて、

「正直、悲しいな……それなりに頑張って積んできたつもりだったが、まったくもって届いていない……強者を前にすれば、遊ばれるだけ……私は、まだ、どこにもたどり着いていない……」

「いえいえ、遊んでなどいませんよぉ。あなたたちは大変お強い。とっても素晴らしいぃ。そうそういない、輝く命の持ち主ですよぉ」

 そう言ってから、天を仰ぎ、

「まあ、確かに、私の視点だと『殺すに値するほど』ではありませぇん……が、しかし、だからといって社会的に価値がないわけではなぁい。私はただの偏屈な美食家。私の舌に合わないからといって、実質的に不味い料理というわけではなぁい。あなたたちは非常に上質ですよぉ」



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